CULTURE
ミレニアル世代を描くアーティスト、アマリア・ウルマンの長編初監督作品『エル プラネタ』。
January 15, 2022 | Culture, Art | casabrutus.com | photo_ⓒ 2020 El Planeta LLC All rights reserved text_Housekeeper
インスタグラムなどのSNSを用いたパフォーマンス・アートで注目を集め、その投稿がNYの〈ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート〉にデジタルアーカイブされるなど、ミレニアル世代を象徴するアーティストの1人となったアマリア・ウルマン。そんな彼女がメガホンを取った初の長編映画作品『エル プラネタ』が公開に。
インスタグラムが流行の兆しを見せ始めた2014年、アマリア・ウルマンはブランドのアイテムに囲まれた様子や、ヨガなどのフィットネスをする姿、ベッドルームでの様子など、SNSの世界に流れるステレオタイプな女性像を演じた「Excellences and Perfections」シリーズを自身のアカウントに投稿。賛否両論を受けながら大きな反響を呼んだこのパフォーマンス・アートで一躍脚光を浴びた彼女は、2015年にグッチのデジタルプロジェクト「#guccigram」に参加、さらにその「Excellences and Perfections」シリーズが〈ニュー・ミュージアム・オブ・コンテンポラリー・アート〉にデジタルアーカイブされ、〈テート・モダン〉では展示会が開かれるなど、大きな注目と高い評価を集めた。
そんな彼女が監督・脚本・主演・プロデュース・衣装デザインを務め、初めて長編映画に挑戦した作品が『エル プラネタ』だ。自身の故郷であるスペインの海辺の田舎町ヒホンを舞台に、ウルマン演じるロンドンのファッションスクールから帰ったばかりの駆け出しデザイナーであるレオと、お金も仕事も無くアパートも強制退去を迫られている母親の2人を中心に物語を描く。
レオは有名歌手のスタイリングの仕事が舞い込むが、現地までの渡航費さえない。母親は万引きを繰り返し、他人の名前で食事の勘定をつけている。共にギリギリの生活を送る2人だが、外に出る時は着飾り、SNSで映えるような生活を装っている。そんな母娘の様子を全編モノクロで映し出した本作は、これまでウルマンが「Excellences and Perfections」シリーズで行ってきた試みの、その裏側までを描く壮大なドキュメンタリーにも思える。華やかな暮らしを演出するその裏にある、日々の生活の悲しみや虚しさ。また、淡々と流れる海辺の風景の中で描写される2人の暮らしは、現代の格差社会の厳しさをも描き出している。
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