杉本博司が書き下ろした、江之浦測候所の“奇譚”。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

杉本博司が書き下ろした、江之浦測候所の“奇譚”。

『カーサ ブルータス』2020年12月号より

〈江之浦測候所〉にまつわる世にも不思議な物語を、杉本自身による随筆、短歌、写真で描いた回想録が刊行に。

ページ見開き。こちらの写真は、完成した冬至光遥拝隧道に立つ杉本。
月夜に照らされた光学硝子舞台。このほか、手描きの図面など貴重な資料も掲載されている。
杉本博司がライフワークとして、四半世紀以上にわたり取り組むランドスケープ〈江之浦測候所〉。その成り立ちには、運命とも因縁ともいえる数々の “奇譚” があった。『江之浦奇譚』は、その構想から現在に至るまでの数奇な物語を、杉本自身が書き下ろした随筆集だ。

施設のある江之浦の地が持つ記憶や、建築群を構成する門や石材などあまたのモノたちの由来、そして杉本が空間を設計していく上で影響を受けた古今東西の逸話の数々が、時には縄文時代にまで歴史を遡りながら語られ、それらが必然ともいえる縁となって〈江之浦測候所〉が出来上がっていく様子が回想される。

各章の冒頭では短歌が詠まれ、前章の歌とゆるやかにつながる連歌になっている。また、杉本自身や彼があとを託す写真家たちが撮影した写真も掲載され、随筆と歌、そして写真のすべてが一体となり、奇譚の世界を体感する内容に。時代も場所も異なる多様な奇譚に導かれ、〈江之浦測候所〉が現在の姿になったことを知る一冊だ。

『江之浦奇譚』/杉本博司 

〈江之浦測候所〉にまつわる数々の物語を “奇譚” として紡いだ回想録。表紙カバーに書かれた歌は、杉本が骨董市で見つけた、猪苗代兼載による独吟『聖廟法楽千句』の古写本から。岩波書店/2,900円。

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