杉本博司演出、パリでは『鷹の井戸』ニューヨークでは『曾根崎心中』。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

杉本博司演出、パリでは『鷹の井戸』ニューヨークでは『曾根崎心中』。

2019年の秋、“舞台演出家”杉本博司には特別なシーズンとなった。パリとニューヨークをそれぞれ代表する劇場で、シーズン幕開けの公演が行われた。パリの〈オペラ座〉ではウィリアム・バトラー・イェイツ『鷹の井戸』をもとにしたバレエ作品。ニューヨークの〈リンカーンセンター・ローズシアター〉では『杉本文楽 曾根崎心中』である。

●パリ・オペラ座で行われたバレエ作品『鷹の井戸』

井戸を守る美しく神秘的な「鷹の精(鷹姫)」。第一配役はエトワール、リュドミラ・パリエロ。 (c)Ann Ray
フランスの王立オペラの歴史は1669年から始まる。これは太陽王ルイ14世の時代だ。そこから今年はちょうど350年。王立オペラの流れをくむパリ国立オペラが誇る歌劇場のうち最も有名なのが、いわゆるパリのオペラ座ガルニエ宮である。象徴的な建築物であり、パリ市内の交通の要所。建築家はシャルル・ガルニエ(1825-1898)で竣工は1875年、現在の天井画はマルク・シャガール(1887-1985)によるもので1965年に取り付けられた。
「老人」の第一配役はベテラン、アレッシオ・カルボーネ。来年、オペラ座を卒業する。 photo_Julien Benhamou
今シーズン、〈オペラ座ガルニエ宮〉の初演目は9月19日から10 月15日の『Sugimoto / Forsythe』だった。ウィリアム・フォーサイスは『Blake Works I』。2016年に創作され、バレエファンの間では再演が待たれていたものだ。一方、杉本はといえばアイルランドの劇作家/詩人ウィリアム・バトラー・イェイツが能に啓発されて書いた戯曲『At the Hawk ‘s Well/鷹の井戸』をバレエに仕立てたのだ。なぜこの演目か、どういうストーリーが元になっているのか、そもそも「能」とは何なのか。
男女のコール・ド・バレエが織りなす群舞も華やかである。 (c)Ann Ray
15世紀に世阿弥が考案した演劇形式「能」について、杉本自身による説明を引く。

「能は単純な構成要素から成り立っている。旅の僧、橋、そして夢である。旅の僧は橋を渡ることによってこの世の時間の束縛から解放されて、ある種のトワイライトゾーンへと導かれる。そこで土地の昔話に思いをはせていると、どこからともなく人が現れその昔話をくわしく語り聞かせる。不思議に思って名をたずねると、意味ありげなことを言い残して消えてしまう。夜もふけて僧が眠りにつくとその夢にさきほどの者が現れ、実は自分こそがその悲劇の物語の主人公の亡霊であることを告げ、この世に残した未練の為に成仏できずに苦しんでいると話し、舞いはじめる。僧が祈りをささげるうちに夜は明けていき、いつしか亡霊も消えていく。」(杉本博司『苔のむすまで』「能 時間の様式」新潮社 2005年)

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