VEHICLE
Chill CARS|巨匠の思いが純粋に形態化された、普段使いのクルマ。
『カーサ ブルータス』2018年12月号より
November 30, 2018 | Vehicle | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Fumio Ogawa illustration_Daijiro Ohara
とにかく空間が欲しかった。1980年に発表された《パンダ》の開発当初に、メーカーの〈フィアット〉が抱えていた条件である。
設計からスタイリングまでを担当したのは、本連載で何度も名を挙げてきた天才デザイナーのジョルジェット・ジウジアーロ。空間を確保するため、可能なかぎり平らなパネルを使ってデザインした。ウィンドシールドまで曲率を持たないガラスである。その結果、《フィアット126》に代わる80年代のベーシックカーとして、3・3Mの短い全長ながら5人乗りが実現した。
ジウジアーロが優れていたのは、軽量化とコスト削減のために部品点数を減らす一方で、それを逆手にとって斬新な提案としたことだ。
それが純粋な形で表現されているのがこの最初期型である。フロントグリルの代わりにスリットが開けられただけのパネル、薄いフロントシート、構造材をほぼ持たないハンモックのようなリアシートといった具合だ。
当時ジウジアーロは〈フィアット〉の会長として絶大な権力を(イタリア中に)持っていたジャンニ・アニェッリと頻繁に接触していた。車両の開発において〈フィアット〉社員と意見対立があると直訴して、自分の考えを説いたとか。《パンダ》も、なにがなんでもこのデザインを、というジウジアーロの強い思いの産物だろう。
日常使うものは美しくあってほしい、とイタリア人はよく言う。《パンダ》はその代表例だ。
ジウジアーロが優れていたのは、軽量化とコスト削減のために部品点数を減らす一方で、それを逆手にとって斬新な提案としたことだ。
それが純粋な形で表現されているのがこの最初期型である。フロントグリルの代わりにスリットが開けられただけのパネル、薄いフロントシート、構造材をほぼ持たないハンモックのようなリアシートといった具合だ。
当時ジウジアーロは〈フィアット〉の会長として絶大な権力を(イタリア中に)持っていたジャンニ・アニェッリと頻繁に接触していた。車両の開発において〈フィアット〉社員と意見対立があると直訴して、自分の考えを説いたとか。《パンダ》も、なにがなんでもこのデザインを、というジウジアーロの強い思いの産物だろう。
日常使うものは美しくあってほしい、とイタリア人はよく言う。《パンダ》はその代表例だ。
special thanks to Tetsuya Ishihara, Pandarino Executive Committee ※データと価格は、撮影車両を参考に算出したものです。
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