VEHICLE
Chill CARS|企業がピークの時に作られた、信念が込められた車。
『カーサ ブルータス』2018年7月号より
June 19, 2018 | Vehicle, Design | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Fumio Ogawa illustration_Daijiro Ohara
デザインは環境から生まれるという意見がある。その良い例がスウェーデンだ。冬が厳しく室内にいる時間が長いため家具デザイナーが活躍してきた。一方、森林に囲まれ、雪が多いため、ストゥッテルハイム(ヨットのレインウェア)やPOC(スキーヘルメット)など世界的なアウトドアブランドも生まれている。
〈サーブ〉もスウェーデン的なクルマだった。安全性と、ラリーを含む雪道での走行性を重視しながら、独自のデザイン哲学を培ってきたのだ。
ここで取り上げる《900》(1978年発表)はブランドを象徴する車種だ。量産車としてターボを初採用したモデルでもあると同時に、大きなハッチゲートを4ドアボディと組み合わせた独自のスタイルが印象的。航空機や〈ハッセルブラッド〉のカメラなどの設計を手がけていた初代チーフデザイナー、シクステン・サソンの“空力”デザインを引き継いだものである。
乗降しやすいよう大きくえぐられたドアシル、空力に良いとされる曲率の大きなウィンドシールド、衝突時に運転者が膝を損傷しないよう床に移されたイグニッションスイッチ、と唯一無二な作りだ。
信念のあるクルマである。しかしこの後〈サーブ〉は、厳しくなった衝突安全基準や生産・開発コストの上昇に阻まれ、《900》のあと理想的なモデルを作れなくなった。だから、これは企業がピークだった時の製品なのだ。
ここで取り上げる《900》(1978年発表)はブランドを象徴する車種だ。量産車としてターボを初採用したモデルでもあると同時に、大きなハッチゲートを4ドアボディと組み合わせた独自のスタイルが印象的。航空機や〈ハッセルブラッド〉のカメラなどの設計を手がけていた初代チーフデザイナー、シクステン・サソンの“空力”デザインを引き継いだものである。
乗降しやすいよう大きくえぐられたドアシル、空力に良いとされる曲率の大きなウィンドシールド、衝突時に運転者が膝を損傷しないよう床に移されたイグニッションスイッチ、と唯一無二な作りだ。
信念のあるクルマである。しかしこの後〈サーブ〉は、厳しくなった衝突安全基準や生産・開発コストの上昇に阻まれ、《900》のあと理想的なモデルを作れなくなった。だから、これは企業がピークだった時の製品なのだ。