VEHICLE
Chill CARS|名門が生み出した、小型高級車の嚆矢。
『カーサ ブルータス』2022年12月号より
November 12, 2022 | Vehicle, Design | Chill CARS | photo_Futoshi Osako text_Izuru Endo illustration_Daijiro Ohara
クルマには「小さな高級車」というジャンルがある。簡潔に作られた小型車に、上級車並みの装備や上質な内装を与えたものだ。
イタリアの〈アウトビアンキ〉が1985年に発売した《Y10》は、当時いくつか存在した、リッターカーベースの小さな高級車のひとつだった。実は〈アウトビアンキ〉のブランド名で売られていたのは、日本など数か国のみで、《Y10》の「本名」は、《ランチア・Y10》だ。高品位と斬新さ、スポーティさを伝統とする名門〈ランチア〉は、フィアットグループの中でも上級ブランドに位置しており、この《Y10》も、基本設計を《フィアット・パンダ》と同じとしながらも、《パンダ》より上位の車種とされた。
〈ランチア〉は、《Y10》の開発にあたり、ハイエンドユーザーに向けた小型車の定義づけに、多くの時間を要したという。そして生まれた《Y10》は、小型車本来のカジュアルさに加え、他の〈ランチア〉車と共通したイメージのマスク、後方に向かって上がるキャラクターライン、黒く塗装されたテールゲートなど、シックでモダン、かつスポーティさを得ていた。内装に関しても、〈アルカンターラ〉社の人工皮革をドア内張などに用い、各部の仕上げも丁寧だった。
昨今の小型車には、装備が充実したプレミアムモデルも多いが、《Y10》は、まさにその嚆矢。ほのかに漂う上質さと気品が、名門の出自を感じさせる一台だ。
〈ランチア〉は、《Y10》の開発にあたり、ハイエンドユーザーに向けた小型車の定義づけに、多くの時間を要したという。そして生まれた《Y10》は、小型車本来のカジュアルさに加え、他の〈ランチア〉車と共通したイメージのマスク、後方に向かって上がるキャラクターライン、黒く塗装されたテールゲートなど、シックでモダン、かつスポーティさを得ていた。内装に関しても、〈アルカンターラ〉社の人工皮革をドア内張などに用い、各部の仕上げも丁寧だった。
昨今の小型車には、装備が充実したプレミアムモデルも多いが、《Y10》は、まさにその嚆矢。ほのかに漂う上質さと気品が、名門の出自を感じさせる一台だ。
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