CULTURE
【本と名言365】パウル・クレー|「芸術とは目に見えるものを…」
September 12, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Keiko Kamijo
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。一枚の絵画はどのように成立しているのだろうか。点、線、面、空間のエネルギー、リズム……。独自の造形理論を追究し続けたパウル・クレーの言葉。
芸術とは目に見えるものをそのまま再現するのではない、見えるようにすることにある
スイスの画家パウル・クレーと聞いてどんな絵を思い浮かべるだろうか。画面全体がぐにゃりと曲がったブロックの形に分割され多彩な色で構成された絵、太い線が踊っているようなリズミカルな絵、定規を使って引いたような線で構成された絵、シンプルで子どもが描くような線で描かれた天使のシリーズ……。と、時代ごとに絵画における様々な技法を作品に落とし込んでいるが、それは彼独自の造形理論に裏付けられたものである。
クレーは自然や身の回りにあるあらゆるものをじっくりと観察し(子どもが描いた絵を集めていたこともある)、思考と実作を繰り返し、常に絵と言葉で記しそれを蓄積していた。そして、自分の作品である一枚の絵画がどのように成立しているか、「芸術作品の生成」を巡る自らの理論をあますところなく紹介した。
本書は彼のフォルムについて、様々なところで発表された手稿や講演をまとめた一冊である。この手稿には、彼がバウハウスで教鞭を執っていた時の講義用ノートも含まれる。
点が動き出すことで線が生まれ、さらに線が移動して面となる。さらに面と面がぶつかり合うと三次元の空間が生じる。クレーは「運動」によって造形が生まれ、その運動のエネルギーの強弱あるいは緊張によってフォルムが生成されると述べる。
この言葉は「創造についての信条告白」という項に登場するものだ。芸術を見えるようにするための線描、点と線と面、そして空間のエネルギーからなるフォルムの表現の例を挙げ、そして「絵は、なんの関連も経過もなく、突然に成立するものだろうか。いや、そうではない。絵は一歩一歩、構築される。まさに家と同じである」という。さらには絵画の鑑賞も実は眼の運動であり、「作品を鑑賞する側にとっても、最も大切なのは、時間である」とも述べる。
上下巻にわたって展開されるクレーの造形理論は、すっと一度で理解できるようなものではない。学生にも「これを暗記してはいけない。誰でもこの図表のどこかをわがことのように感ずるだろう」と語り、形式主義に陥ることを批判した。
クレーの思索の壮大さ、そして熱い講義を追体験できる一冊だ。
スイスの画家パウル・クレーと聞いてどんな絵を思い浮かべるだろうか。画面全体がぐにゃりと曲がったブロックの形に分割され多彩な色で構成された絵、太い線が踊っているようなリズミカルな絵、定規を使って引いたような線で構成された絵、シンプルで子どもが描くような線で描かれた天使のシリーズ……。と、時代ごとに絵画における様々な技法を作品に落とし込んでいるが、それは彼独自の造形理論に裏付けられたものである。
クレーは自然や身の回りにあるあらゆるものをじっくりと観察し(子どもが描いた絵を集めていたこともある)、思考と実作を繰り返し、常に絵と言葉で記しそれを蓄積していた。そして、自分の作品である一枚の絵画がどのように成立しているか、「芸術作品の生成」を巡る自らの理論をあますところなく紹介した。
本書は彼のフォルムについて、様々なところで発表された手稿や講演をまとめた一冊である。この手稿には、彼がバウハウスで教鞭を執っていた時の講義用ノートも含まれる。
点が動き出すことで線が生まれ、さらに線が移動して面となる。さらに面と面がぶつかり合うと三次元の空間が生じる。クレーは「運動」によって造形が生まれ、その運動のエネルギーの強弱あるいは緊張によってフォルムが生成されると述べる。
この言葉は「創造についての信条告白」という項に登場するものだ。芸術を見えるようにするための線描、点と線と面、そして空間のエネルギーからなるフォルムの表現の例を挙げ、そして「絵は、なんの関連も経過もなく、突然に成立するものだろうか。いや、そうではない。絵は一歩一歩、構築される。まさに家と同じである」という。さらには絵画の鑑賞も実は眼の運動であり、「作品を鑑賞する側にとっても、最も大切なのは、時間である」とも述べる。
上下巻にわたって展開されるクレーの造形理論は、すっと一度で理解できるようなものではない。学生にも「これを暗記してはいけない。誰でもこの図表のどこかをわがことのように感ずるだろう」と語り、形式主義に陥ることを批判した。
クレーの思索の壮大さ、そして熱い講義を追体験できる一冊だ。
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