FOOD
てんぷら界に新スター現る! | 寺尾妙子のNEWSなレストラン
December 2, 2017 | Food | casabrutus.com | photo_Kayoko Aoki text_Taeko Terao editor_Rie Nishikawa
てんぷら界に次々、スターを送り込んできた〈てんぷら 山の上〉から、またひとり、独立を果たした。〈てんぷら前平〉店主、前平智一が築くてんぷらの世界とは?
てんぷら店のオープンが続いている。記憶にある限り、寿司やフレンチと違って、てんぷらはまだブームになっていない。いや、江戸時代にあったが、少なくともブームというほどのムーブメントは起こしていないはずだ。
とはいえ、てんぷらには根強いファンが一定数いて、1週間後の予約を入れようと、めぼしい店から順に10軒以上あたっても席がないことなんてザラ。ちょっといい店ができるとてんぷらファンが殺到し、あっという間に「予約困難な店」となってしまう。
とはいえ、てんぷらには根強いファンが一定数いて、1週間後の予約を入れようと、めぼしい店から順に10軒以上あたっても席がないことなんてザラ。ちょっといい店ができるとてんぷらファンが殺到し、あっという間に「予約困難な店」となってしまう。
きっと、9月にオープンした〈てんぷら前平〉もすぐにそうなるだろう。なんといっても店主、前平智一は〈てんぷら 山の上〉の出身。〈てんぷら 山の上〉といえば、銀座〈てんぷら近藤〉店主、近藤文夫や京橋〈てんぷら深町〉店主、深町正男といった日本を代表するてんぷら職人を輩出し、昭和の文豪、池波正太郎が通ったことで知られる名門。同店に約20年在籍し、そのうち9年近くを六本木店の料理長として務めた前平さんが独立したと聞けば、ファンなら見逃せない。
「油に入れた瞬間、取り返しがつかない料理なんですよ」
おいしさとは、今この瞬間であり、はかなさである。そのことを身にしみて知る料理人の言葉だ。
「素材や衣、油の質や温度、その瞬間、瞬間の室温や湿度を敏感に感じ取り、油の中の素材を箸で持った感触で、揚がり具合がわかります。それは人に教えてもらうものでも、教えることができるものでもなく、自分だけが感じる感覚。ベストの揚げ具合を見極めるのが、てんぷら職人の仕事なんです」
わずか1秒、1度で変わってしまう世界なのだ。
おいしさとは、今この瞬間であり、はかなさである。そのことを身にしみて知る料理人の言葉だ。
「素材や衣、油の質や温度、その瞬間、瞬間の室温や湿度を敏感に感じ取り、油の中の素材を箸で持った感触で、揚がり具合がわかります。それは人に教えてもらうものでも、教えることができるものでもなく、自分だけが感じる感覚。ベストの揚げ具合を見極めるのが、てんぷら職人の仕事なんです」
わずか1秒、1度で変わってしまう世界なのだ。
たとえば、この店で編み出した「芽ネギと小柱の海苔巻き」は芽ネギを主役にしたシグニチャーディッシュ。揚げ時間をギリギリまで短くすることで、ハッとするほどの清々しさを芽ネギから引き出した。
「小柱の火の通し方は、芽ネギを邪魔しない程度の甘さを引き出すため、極レアに。正直、うちの代表作です」。
地味な見た目だが、まるでメガネをとったら美少女! な展開もよく、なにより実際、衝撃的においしかったことで納得。
「小柱の火の通し方は、芽ネギを邪魔しない程度の甘さを引き出すため、極レアに。正直、うちの代表作です」。
地味な見た目だが、まるでメガネをとったら美少女! な展開もよく、なにより実際、衝撃的においしかったことで納得。
Loading...
illustration Yoshifumi Takeda
寺尾妙子
てらお たえこ 食ライターとして雑誌やWEBで執筆。好きな食材はごはん、じゃがいも、トリュフ。現在、趣味の茶の湯に邁進中。