FASHION
ジャン=ポール・グードの過剰なイメージワールド|石田潤のIn the mode
December 7, 2018 | Fashion, Art, Design | casabrutus.com | text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
東京・銀座の〈シャネル・ネクサス・ホール〉でジャン=ポール・グード展が開催中だ。80年代から90年代にかけて時代を席巻した、希代のイメージメーカーによる過剰な世界の爆発だ。
ジャン=ポール・グードとシャネルのコラボレーションと聞いて、真っ先に思い出すのはヴァネッサ・パラディを起用した香水「ココ」のCMだ。1992年にこの作品が発表された当時、ヴァネッサは19歳。『白い婚礼』(1989年)で映画初主演を果たしたばかりのライジングスターだった。彼女が演じたのは金の鳥かごに囚われた黒い小鳥。鳥かごは、ココ・シャネルの恋人であったウェストミンスター公爵がかつてココにプレゼントした品である。フレンチロリータの代名詞的存在であったヴァネッサの魅力が全開したともいえるこのヴィジュアルで、彼女は一躍世界のスターとなった。
〈シャネル・ネクサス・ホール〉で開催中の『”In Goude we trust!” ジャン=ポール・グード展覧会』では、もはや伝説となったこの「ココ」のキャンペーンイメージを含むシャネルとのコラボレーションを中心に、グードのドローイングやスケッチ、2017年に〈ポンピドゥー・センター〉で発表された巨大な映像パネル作品が展示されている。
「希代のイメージメーカー」と評されるジャン=ポール・グードは、写真家でありグラフィックデザイナー、アートディレクターであり映像監督という、“イメージ”に関わるあらゆる肩書きを兼ね備えた人物だ。60年代にイラストレーターとしてキャリアをスタートして以来、斬新で時にはスキャンダラスなイメージを作り出してきた。
会場内で上映されている彼の生い立ちから現在までを追ったフィルム『So Far So Goude』は、グードのインスピレーションソースを知る上でも興味深い。生まれ育った家の近くにあった植民地博物館、アメリカ移民でダンサーだった母、ハリウッドのミュージカル映画など、彼が幼い頃から慣れ親しみ愛してきたものたちが、エスニシティ、動き、過剰といったその後のグード作品を特徴づけているのがよくわかる。
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。
