FASHION
“エディ・スリマン”を貫いた、新生セリーヌの1stコレクション|石田潤の In the mode
| Fashion | casabrutus.com | photo_Shoichi Kajino text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
エディ・スリマンによるセリーヌがベールを脱いだ。物議を醸したデザイナー交代劇を経て発表された、エディのセリーヌでの意思表明とは?
2019年春夏ファッションウィークで最も注目を集めたショーといえば、間違いなくエディ・スリマンによるセリーヌだ。前クリエイティブ・ディレクター、フィービー・ファイロの後任デザイナーとしてエディの名が告げられたのは今年1月。発表されるやいなや、ネット上では議論が巻き起こった。成熟した女性のためのワードローブを作り上げ、インスタグラムをはじめとするSNSやセレブリティとの距離を置いたその姿勢も女性たちの高い支持を集めたフィービー・ファイロ。対してエディ・スリマンは、ディオール・オムに始まりサンローランでも一貫して “若さ”を賛歌する服を作り続け、デジタル・メディアも華麗にリードするユース・カルチャーのグル(導師)である。
フィービーからセリーヌというブランドを引き継ぐエディのクリエイションは、果たして変わるのか、変わらないのか。パリの左岸、ナポレオンの墓が眠るアンバリッドの広場に建てられた巨大なショー会場で何が起こるのか、誰もがその瞬間を待った。
答えはファースト・ルックで出た。暗がりのなか、エディがデザインしたアートピースのようなセットが蠢き、フランス共和国親衛隊の軍楽隊が彼のフランスへの帰還(エディは西海岸の拠点をパリへと戻した)を告げると、現れたのは巨大なリボンをあしらったスーパーミニのベビードールドレス姿のモデルだ。足元は「セリーヌ ベルリン」と銘打ったショートブーツ、頭にはレースのヘッドピースをつけている。このルックを見てまず思い浮かんだのは、エディがサンローラン時代に最初で最期となったクチュールショーで発表したドレスだ。
続いて現れたメンズモデルは、ブラックスーツ。肩が張ったジャケットに、ハイウエストで丈が短めのタックパンツを合わせている。70’Sのパリ・モッズやクラフトワークなどのコールドウェイブからインスパイアされたというスタイルは、細身のブラックタイとサングラスといった小道具も忘れない。男女ともにあまりに”エディ”すぎて、思わず笑ってしまった。流れる音楽もサンローラン時代からエディのショーの音楽を手がけてきたラ・ファム。「これが僕のスタイル、何か文句ある?」とでも言わんばかりの徹底ぶりは、お見事というしかなかった。
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。
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