FASHION
「奇想のモード」展、エキセントリックを貫くモードとアート|石田潤のIn The Mode
| Fashion, Art, Design | casabrutus.com | photo_Shin-ichi Yokoyama text_Jun Ishida editor_Keiko Kusano
〈東京都庭園美術館〉で開催中の『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』。過去から現在にいたるエキセントリックな作品群が、アートとファッションの新たな可能性を見出させる。
アートとファッションのコラボレーションはもはや一般的なものになったが、いま以上にこの2つが距離を縮めた時代があった。
1930年代、『ヴォーグ』の表紙をサルヴァドール・ダリやジョルジョ・デ・キリコが飾り、店のショーウィンドウにはシュルレアリスム風のディスプレイが登場した。そして当時ココ・シャネルのライバルであったエルザ・スキャパレリは、ダリとのコラボレーションを始め、シュルレアリスムにヒントを得た作品を多く発表した。
こうしたアートとファッションのコラボレーションの原点へと思いを馳せる展覧会『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』が、〈東京都庭園美術館〉で行われている。
1930年代、『ヴォーグ』の表紙をサルヴァドール・ダリやジョルジョ・デ・キリコが飾り、店のショーウィンドウにはシュルレアリスム風のディスプレイが登場した。そして当時ココ・シャネルのライバルであったエルザ・スキャパレリは、ダリとのコラボレーションを始め、シュルレアリスムにヒントを得た作品を多く発表した。
こうしたアートとファッションのコラボレーションの原点へと思いを馳せる展覧会『奇想のモード 装うことへの狂気、またはシュルレアリスム』が、〈東京都庭園美術館〉で行われている。
奇想という言葉からまず思い出すのは、美術史家の辻惟雄による著作『奇想の系譜』だ。辻は「<奇想>という言葉は、エキセントリックの度合いの多少にかかわらず、困難の殻を打ち破る、自由で斬新な発想のすべてを包括できる」(辻惟雄『奇想の系譜』あとがきより)と述べ、伊藤若冲ら6名の画家を日本近世絵画史の中に位置付けた。そして、この「奇想のモード」展で担当学芸員の神保京子が試みるのは、奇想の系譜をモードの歴史の中に見出すことである。
展覧会の最初の部屋に登場するのは、『ファーブル昆虫記』のアンリ・ファーブルを曾祖父に持つヤン・ファーブルによる玉虫の羽を用いたアート作品《甲冑》だ。展示では、他にも昆虫や動物の身体の一部を用いたアクセサリーや靴が登場する。神保学芸員は、近年ではタブーになりつつある生物を身にまとう行為について次のように述べる。
「有機的な生物を身にまとうというのは、現代の私たちから見れば奇想天外に見えるかもしれませんが、植物を編んだものや毛皮を着用するという行為は自然な営みでした。狩猟文化では、雷鳥の足の先をお守りやアクセサリーとして身につけました。身近にある生き物の一部を即物的に身につけるというのは、初源的な行為だったのです」
展覧会の最初の部屋に登場するのは、『ファーブル昆虫記』のアンリ・ファーブルを曾祖父に持つヤン・ファーブルによる玉虫の羽を用いたアート作品《甲冑》だ。展示では、他にも昆虫や動物の身体の一部を用いたアクセサリーや靴が登場する。神保学芸員は、近年ではタブーになりつつある生物を身にまとう行為について次のように述べる。
「有機的な生物を身にまとうというのは、現代の私たちから見れば奇想天外に見えるかもしれませんが、植物を編んだものや毛皮を着用するという行為は自然な営みでした。狩猟文化では、雷鳥の足の先をお守りやアクセサリーとして身につけました。身近にある生き物の一部を即物的に身につけるというのは、初源的な行為だったのです」
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石田潤
いしだ じゅん 『流行通信』、『ヴォーグ・ジャパン』を経てフリーランスに。ファッションを中心にアート、建築の記事を編集、執筆。編集した書籍に『sacai A to Z』(rizzoli社)、レム・コールハースの娘でアーティストのチャーリー・コールハースによる写真集『メタボリズム・トリップ』(平凡社)など。
