DESIGN
バカラ、クリストフル、エルメス…。一流ブランドを惹き寄せるスイスの大学ECALの展覧会。|土田貴宏の東京デザインジャーナル
April 6, 2018 | Design, Art, Fashion | casabrutus.com | photo_Satoshi Nagare text_Takahiro Tsuchida
デザインを学ぶ学生たちと、世界的なハイブランドの実験的なコラボレーションから、もの作りの未来が見える? スイスの美術大学、ECALの展覧会が原宿のギャラリー〈The Mass〉で開催中。
世界のデザイン学校の中で、近年、ひときわ注目度を高めているのがスイスのECAL(ローザンヌ美術大学)。この大学は、通常のプロダクトやグラフィックのデザイン科と別に、2008年からデザイン・フォー・ラグジュアリー&クラフツマンシップという独自の学科をスタートした。在籍する約15~20名の学生たちは、その名の通りにラグジュアリーブランドや優れた職人技をもつメーカーとコラボレーションして作品を制作していく。現在、原宿のギャラリー〈The Mass〉では、そこから生まれた代表的な作品を展示する展覧会が開催されている。
学生たちがコラボレーションするブランドには、バカラ、クリストフル、ヴァシュロン・コンスタンタン、エルメスなどの一流ブランドも多い。このコースを担当するECAL教授のニコラ・ル・モアニャはこう話す。
「これらのブランドは高い技術と製品を流通させる力があり、同時にデザインの実験や驚きを求めています。学生たちに必ずしも専門的な知識はありませんが、だからこそ前例のない創造的な発想ができる。こうした産学共同プロジェクトは、いつもブランドのほうから私たちにアプローチしてくれるのです」
学生たちがコラボレーションするブランドには、バカラ、クリストフル、ヴァシュロン・コンスタンタン、エルメスなどの一流ブランドも多い。このコースを担当するECAL教授のニコラ・ル・モアニャはこう話す。
「これらのブランドは高い技術と製品を流通させる力があり、同時にデザインの実験や驚きを求めています。学生たちに必ずしも専門的な知識はありませんが、だからこそ前例のない創造的な発想ができる。こうした産学共同プロジェクトは、いつもブランドのほうから私たちにアプローチしてくれるのです」
⚫︎Aurélie Mathieu×バカラ《Brick》
Aurélie Mathieuがデザインしたバカラのフラワーベース《Brick》。既存のクリスタルガラスのベースをリング状にカットし、ポストモダンのデザインをモチーフに、大理石など多彩な素材のブロックと一緒に積み上げた。この作品はバカラからリミテッド・エディションとして販売されたこともある。デザイン・フォー・ラグジュアリー&クラフツマンシップ科の特徴は、試作品を作って発表するだけでなく、それが市場に出るケースも珍しくないこと。実現すれば学生たちにとってもブランドにとっても発信のチャンスになる。
⚫︎Alexis Tourro×ヴァシュロン・コンスタンタン《Adventure Roamntique》
Alexis Tourroによる《Adventure Roamntique》。上部はピロー、中央はバッグで、下部にブランケットが収納できるピクニック用のバックパックだ。それぞれのパーツにレザー、ラタン、木などを使い、細かい手仕事で仕上げている。伝統あるスイスの時計ブランド、ヴァシュロン・コンスタンタンとのコラボレーションで、このプロジェクトではフォルマファンタズマが講師を務めた。
「私たちが考えるラグジュアリーとは、クラフツマンシップにほかなりません。クラフツマンシップは、革や石のようなありふれた素材を高級品へとトランスフォームさせるのです」とル・モアニャは説明する。フォルマファンタズマのような第一線で活躍するデザイナーと、たとえ数日間でも自由に会話してもの作りができることも、学生たちにとっては貴重な体験。その影響は、作品のどこかに反映されている。
「私たちが考えるラグジュアリーとは、クラフツマンシップにほかなりません。クラフツマンシップは、革や石のようなありふれた素材を高級品へとトランスフォームさせるのです」とル・モアニャは説明する。フォルマファンタズマのような第一線で活躍するデザイナーと、たとえ数日間でも自由に会話してもの作りができることも、学生たちにとっては貴重な体験。その影響は、作品のどこかに反映されている。
⚫︎Jinsik Kim×クリストフル《Cleaving Silver》
Jinsik Kimがクリストフルのためにデザインした《Cleaving Silver》。天然石とシルバーをシンプルに組み合わせ、素材感を引き立たせている。このデザインは後にクリストフルから製品化された。韓国出身のJinsik Kimのように、デザイン・フォー・ラグジュアリー&クラフツマンシップ科では常に約10カ国の学生が在籍していて、バックグラウンドが違う学生が一緒にプロジェクトに取り込むことにもメリットがあるという。最近は日本人の学生も増えている。
Loading...
illustration Yoshifumi Takeda
土田貴宏
つちだ たかひろ デザインジャーナリスト、ライター。家具やインテリアを中心に、デザインについて雑誌などに執筆中。学校で教えたり、展示のディレクションをすることも。