DESIGN
トラフが手がけた、“ない”のに“ある”舞台美術。
『カーサ ブルータス』2018年1月号より
December 12, 2017 | Design, Architecture | a wall newspaper | photo_Yoichi Onoda text_Keiko Kamijo editor_Yuka Uchida
初演から100回以上舞台美術なしで公演されてきた、『三月の5日間』にトラフが新たな線を引き直す。
渋谷のラブホテルでセックスに興じたり、だらだらとしゃべりながらデモ行進に参加したりする若者たち。その背後ではアメリカがイラクへ空爆を開始し、戦争が始まろうとしている。そんな2003年3月の5日間の出来事を描いたチェルフィッチュの舞台『三月の5日間』。04年の初演から100回以上、世界各国で上演されてきた舞台が今回、俳優を一新しリクリエイションされることになり、初めて舞台美術を導入する。チェルフィッチュとは4度目の仕事となるトラフ建築設計事務所が手がけることになった。
「ないのが面白いんですけど、ないこと以上に面白い舞台美術がある状態を自分たちも見てみたかったんですよね」とチェルフィッチュ主宰の岡田利規さんは語る。
もともと何もなかった舞台に何を加えたらもっと面白くなるのか、トラフの鈴野浩一さんは、様々なスタディを繰り返した。
「最初は高さのあるものを置いてみたりしていたんですが、俳優の動きや言葉が作り出す世界より舞台美術の存在感が大きくなってしまってはダメ。岡田さんと話し合うなかで、だんだん何もしない方向になりました。でも、“白線”って最小限の建築だと思うんです。見る角度で太さが変わったり、壁が立ち上がったりするかと思えば、存在感がなくなったり。空間の中で自在に線が変化していく姿が面白い」と鈴野さんは言う。
空間に加えられた線と身体の関係、という視点から舞台を観るのも面白い体験になるかもしれない。
「ないのが面白いんですけど、ないこと以上に面白い舞台美術がある状態を自分たちも見てみたかったんですよね」とチェルフィッチュ主宰の岡田利規さんは語る。
もともと何もなかった舞台に何を加えたらもっと面白くなるのか、トラフの鈴野浩一さんは、様々なスタディを繰り返した。
「最初は高さのあるものを置いてみたりしていたんですが、俳優の動きや言葉が作り出す世界より舞台美術の存在感が大きくなってしまってはダメ。岡田さんと話し合うなかで、だんだん何もしない方向になりました。でも、“白線”って最小限の建築だと思うんです。見る角度で太さが変わったり、壁が立ち上がったりするかと思えば、存在感がなくなったり。空間の中で自在に線が変化していく姿が面白い」と鈴野さんは言う。
空間に加えられた線と身体の関係、という視点から舞台を観るのも面白い体験になるかもしれない。
縦900×横2,700×奥行き1,800mmの、通称「トウフ」と呼ばれる巨大な箱。渋谷の大型ビジョンやホテルの天井、戦争の不穏な空気などを感じさせる。字幕を表示する機能も。
『三月の5日間』
2003年、イラク戦争が開戦した頃の東京が舞台。04年初演の衝撃作を、26歳以下の俳優で再演する意味を再考したい。〜12月20日。
〈KAAT神奈川芸術劇場〉