DESIGN
田根剛、皆川明、森永邦彦……13名のクリエイターが見つけた日本の“デザイン”が国立新美術館に!
December 9, 2022 | Design, Architecture, Art, Culture | casabrutus.com | text_Yoshinao Yamada
日本に国立のデザインミュージアムを。いまだ実現はしていないが、設立するならどんなコトやモノを取り上げるのか? 世界的に活躍する13人のクリエイターが日本各地に眠る「デザインの宝物」を探し、それぞれ独自の視点で日本のデザインミュージアムの可能性に迫ります。
デザイナーの三宅一生が国立のデザインミュージアム設立を求めて声を上げたのは、2012年のこと。それをきっかけに、国内で日本におけるデザインミュージアムのあり方が議論されてきた。東京・六本木の〈国立新美術館〉で開催されている展覧会『DESIGN MUSEUM JAPAN展 集めてつなごう 日本のデザイン』は、その可能性の一つを提示するものだ。
本展は、2020年から制作されたNHK Eテレの番組『デザインミュージアムをデザインする』を原点とする。番組では、第一線で活躍するクリエイターたちに「日本にまだないデザインのミュージアムをあなたが作るなら、どんなものを作りますか?」と問いかけ、その答えの中から、「日本各地に点在する、素晴らしい『デザインの宝物』を所蔵する館や組織をネットワークし、その集合体を〈デザインミュージアム〉と呼ぶ」というアイデアが浮かび上がった。本展は、その提案を指針に、各地でリサーチを行ったクリエイター13名が、日本各地の生活文化に根ざすデザインの物語を探る。参加クリエイターは、田根剛、皆川明、西沢立衛、柴田文江、須藤玲子、田川欣哉、乾久美子、水口哲也、三澤遥、辻󠄀川幸一郎、原研哉、廣川玉枝、森永邦彦の13名だ。
彼らが注目したデザインは産業革命以降に発展した近現代の概念に限らない。縄文時代における人々の暮らしに始まり、伝統的な衣食住の道具、世界最先端のスポーツウェア、祭事といった文化風俗まで、実に幅広い要素からデザインの根源を見出している。展示では彼らが見つけた〈デザインの宝物〉を一堂に並べ、リサーチ映像とともに紹介している。
本展は、2020年から制作されたNHK Eテレの番組『デザインミュージアムをデザインする』を原点とする。番組では、第一線で活躍するクリエイターたちに「日本にまだないデザインのミュージアムをあなたが作るなら、どんなものを作りますか?」と問いかけ、その答えの中から、「日本各地に点在する、素晴らしい『デザインの宝物』を所蔵する館や組織をネットワークし、その集合体を〈デザインミュージアム〉と呼ぶ」というアイデアが浮かび上がった。本展は、その提案を指針に、各地でリサーチを行ったクリエイター13名が、日本各地の生活文化に根ざすデザインの物語を探る。参加クリエイターは、田根剛、皆川明、西沢立衛、柴田文江、須藤玲子、田川欣哉、乾久美子、水口哲也、三澤遥、辻󠄀川幸一郎、原研哉、廣川玉枝、森永邦彦の13名だ。
彼らが注目したデザインは産業革命以降に発展した近現代の概念に限らない。縄文時代における人々の暮らしに始まり、伝統的な衣食住の道具、世界最先端のスポーツウェア、祭事といった文化風俗まで、実に幅広い要素からデザインの根源を見出している。展示では彼らが見つけた〈デザインの宝物〉を一堂に並べ、リサーチ映像とともに紹介している。
●田根剛:縄文のムラに日本におけるデザインの原点を見る
建築家の田根剛が訪れたのは、岩手県一戸町の〈御所野縄文博物館〉。同館は縄文時代中期後半の大規模な集落跡にあり、敷地内では竪穴住居や配石遺構などを復元する。田根はここで、約500年にわたって人々が定住したムラの暮らしにデザインを見出した。
「縄文時代の遺跡は日本各地にあり、その文化はまさに日本の基盤といっていいでしょう。デザインミュージアムを作ろうというと、ついモダンデザインを思い浮かべがちです。しかし日本には1万年以上前から絶えず続く生活文化があり、その蓄積をデザインミュージアムとして考えたいというのが起点となりました」
「縄文時代の遺跡は日本各地にあり、その文化はまさに日本の基盤といっていいでしょう。デザインミュージアムを作ろうというと、ついモダンデザインを思い浮かべがちです。しかし日本には1万年以上前から絶えず続く生活文化があり、その蓄積をデザインミュージアムとして考えたいというのが起点となりました」
田根は御所野遺跡の住居跡が、土を盛った屋根をもつ建物であったことに注目する。私たちの多くは縄文時代の住宅というと茅葺き屋根を思い描くが、そのイメージを覆すものだと田根は続ける。
「掘った土がそのまま屋根の分量になるという研究もなされており、頂部に煙突ぐらいの隙間を設けることで、室内で火が燃え上がらずに囲炉裏のような温かさを生みだしていたと推測されています。僕は、移住から定住に移り変わったことが日本におけるデザインの起源ではないかと考えました。
定住によって石器を磨き、土をこねて壺を作り、木の実を蓄え、住居を作った。そして火を囲むところから定住が始まり、同時に時間の概念が生まれるとともに時間をデザインするようになったとも仮説を立てました。
共に暮らす仲間が死を迎えたときに、移動して暮らしていた時期とは違うかたちで悲しみと向き合うことになったのではないか。その気持ちと折り合いをつけるために祈りを捧げ、儀式が生まれたように思います」
「掘った土がそのまま屋根の分量になるという研究もなされており、頂部に煙突ぐらいの隙間を設けることで、室内で火が燃え上がらずに囲炉裏のような温かさを生みだしていたと推測されています。僕は、移住から定住に移り変わったことが日本におけるデザインの起源ではないかと考えました。
定住によって石器を磨き、土をこねて壺を作り、木の実を蓄え、住居を作った。そして火を囲むところから定住が始まり、同時に時間の概念が生まれるとともに時間をデザインするようになったとも仮説を立てました。
共に暮らす仲間が死を迎えたときに、移動して暮らしていた時期とは違うかたちで悲しみと向き合うことになったのではないか。その気持ちと折り合いをつけるために祈りを捧げ、儀式が生まれたように思います」
●皆川 明:雪国のくらしを支える緞通
デザイナーの皆川 明が取り上げるのは、山形県山辺町のじゅうたんブランド〈山形緞通(だんつう)〉。緞通とは手織りによる厚みのあるじゅうたんで、わずか1センチを織るのに1日かかることもあるという。
「日本にデザインミュージアムを作るのであれば、現代の良質なデザインに限らず、田根さんの展示するような縄文という私たちのルーツ、緞通のようなオーガニックな技術といったものも取り上げていくのがいいように思います。世界でも他にないユニークなミュージアムになるでしょうから」と皆川。
「日本にデザインミュージアムを作るのであれば、現代の良質なデザインに限らず、田根さんの展示するような縄文という私たちのルーツ、緞通のようなオーガニックな技術といったものも取り上げていくのがいいように思います。世界でも他にないユニークなミュージアムになるでしょうから」と皆川。
皆川は数年前から新たな緞通の実現に取り組んできた。課題となったのは一つの色に宿る濃淡の表現。皆川が色鉛筆で描いたデザイン画の筆致は繊細な濃淡をもつが、一色ずつ染めた糸を織り込んでいく緞通では滑らかなグラデーションの表現が難しい。そこでかすり染めの糸を使い、糸そのものがもつグラデーションで濃淡の表現を実現させることとなった。
「この技術自体は1970年代にも試みられたそうですが、当時は広い面積を織ったために効果的ではないと判断されてしまいました。今回は小さな面積で濃淡を出す必要があり、それには有効だとわかったのです。この手法ではわずかな個体差も生まれますが、工業製品による均一的な表情から少し離れて生まれる良さも感じます。
合理化のできない作業を維持しつづけていることに、緞通という文化の素晴らしさがあります。彼らの技術力をもってすれば写真を再現するかのような表現も可能ですが、手で描いた絵のような表現も大事にしていいのではないかと考えました」
「この技術自体は1970年代にも試みられたそうですが、当時は広い面積を織ったために効果的ではないと判断されてしまいました。今回は小さな面積で濃淡を出す必要があり、それには有効だとわかったのです。この手法ではわずかな個体差も生まれますが、工業製品による均一的な表情から少し離れて生まれる良さも感じます。
合理化のできない作業を維持しつづけていることに、緞通という文化の素晴らしさがあります。彼らの技術力をもってすれば写真を再現するかのような表現も可能ですが、手で描いた絵のような表現も大事にしていいのではないかと考えました」
Loading...
Loading...