DESIGN
デザイナー・石本藤雄の新たな拠点を訪ねて、愛媛・松山へ。
『カーサ ブルータス』2022年5月号より
May 3, 2022 | Design | a wall newspaper | photo_Norio Kidera text_Housekeeper
長年マリメッコやアラビアで活躍したデザイナーの石本藤雄。愛媛・松山に、彼のアトリエとショップが誕生しました。
フィンランドを代表するブランド〈マリメッコ〉や陶器メーカー〈アラビア〉で、デザイナー・陶芸家として長きにわたり名作を世に送り出してきた石本藤雄。50年の時を経て、自身の故郷からほど近い愛媛・松山に拠点を移した彼のアトリエと、デザインを手がけるブランド〈ムスタキビ〉の新しいショップが、市内の道後地区に完成した。
「いつかは日本に帰って制作活動をしようと思っていました。松山は雪がないのが少し寂しいけど、住んでいたヘルシンキと人口は大体同じくらい。それにどちらも街にトラムが走っているし、似ている気がします。フィンランドに移住して50年で帰国。ここからまたゼロからスタートです」
「いつかは日本に帰って制作活動をしようと思っていました。松山は雪がないのが少し寂しいけど、住んでいたヘルシンキと人口は大体同じくらい。それにどちらも街にトラムが走っているし、似ている気がします。フィンランドに移住して50年で帰国。ここからまたゼロからスタートです」
にこやかに笑いながらそう話す石本。ショップの隣に位置するアトリエには、陶器を制作するための型が並ぶ作業テーブルや、〈アラビア〉のアトリエのものと同じサイズで取り寄せた窯、現地で長年にわたり使用してきた道具類が用意され、新たな創作が今まさに始まろうとしている。
「アラビアでは釉薬も専任の職人が作ってくれていましたが、ここでは自分で一から作らなければいけない。これから釉薬作りも勉強していきますよ」
「アラビアでは釉薬も専任の職人が作ってくれていましたが、ここでは自分で一から作らなければいけない。これから釉薬作りも勉強していきますよ」
81歳を迎えてなお、新たな挑戦をやめない石本。そんな彼の手がけたプロダクトにいち早く出会えるのが〈ムスタキビ〉のショップ。石本の意見を取り入れて設計された、作り込みすぎない空間を意識したミニマルな店内には、彼がデザインを担当し、愛媛をはじめとする日本各地の職人が手がけた多彩なアイテムが並ぶ。
「マリメッコに入りたての頃に描いていたスケッチを手ぬぐいにしたり、アラビアでは商品化されなかったゴブレットを制作したりしています」と石本。彼がこれまでチャレンジしたかったデザインが、より自由に表現され人々に届く。
「マリメッコに入りたての頃に描いていたスケッチを手ぬぐいにしたり、アラビアでは商品化されなかったゴブレットを制作したりしています」と石本。彼がこれまでチャレンジしたかったデザインが、より自由に表現され人々に届く。
店内にはギャラリーも併設し、作品を展示・販売するスペースに。アトリエで制作した陶器作品をすぐに展示することもでき、より一層、石本のクリエイションと人々の距離が一体となった環境だ。この新天地から今後、どんな作品が生み出されるのか。これからの彼の歩みに目が離せない。
石本藤雄
いしもとふじお テキスタイルデザイナー・陶芸家。1941年愛媛県生まれ。70年フィランドへ移住し、〈マリメッコ〉および〈アラビア〉の作家として活躍。2020年に帰国し、松山を拠点に活動を開始。
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