DESIGN
来日した巨匠ディーター・ラムスが説く、グッドデザインの規範。
June 23, 2016 | Design | a wall newspaper | photo_Manami Takahashi text_Takahiro Tsuchida
今なお多くのデザイナーが信奉するディーター・ラムス。彼が考えるデザインの意義、現在、そして美について。
「カーサ ブルータス? 11年前の取材をよく覚えているよ」とディーター・ラムス。1950年代からデザイナーとして活躍し、ブラウンなどの製品を通してデザイン界に絶大な影響を与えた彼は、2005年に京都の建仁寺で個展を開催した。その直前、準備に忙しい最中に取材に応じた思い出を淀みなく語るほど、現在もラムスは頭脳明晰だ。そして若々しい批評精神にあふれている。
TP 1 (1959)
Q 84歳を迎えた現在、どんな活動をされているのですか?
デザインの仕事はほぼしていない。私がデザイナーだったころとは、デザインの意味合いが変わってしまったからね。ライフスタイルの一部として消費されるデザイナー家具のようなものは、自分には無縁の分野。それよりも、シンポジウムなどで考えを伝えたり、f/p designのフリッツ・フレンクラーと一緒にミュンヘン工科大学で建築を学ぶ学生を指導したりしている。工業デザインの視点から建築を考えることに、大きな可能性を感じているんだ。例えば太陽光パネルを外壁に使う際、どうやって人が住む環境にふさわしいものにするか。デザイナーの発想が役立つケースは多いだろう。
Q 現在の日本のデザインや建築は、あなたにはどう見えますか?
残念ながら自己主張が強すぎる。特に大型施設の建築は顕著だね。ある時期までと違い、情報過多でデザインしすぎたものが増えてしまった。周囲の環境について深く考えず、自分の巣を作っているみたいだ。日本の建物で素晴らしいのは、限られた土地を上手に使いこなすところだ。プロダクトについては、量を重視しすぎていると思う。私は長期的な関係を築けるわずかなクライアントとだけ仕事してきた。だから1つの製品を発表してからも細かい改良を重ね、同じシステムに基づいて発展させることができた。結果、長生きするデザインが生まれていく。私が今、座っているヴィツゥの椅子もそんなふうに完成した。
SK 4 (1956)
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