DESIGN
須田二郎「木の器」展@OUTBOUND|輪湖雅江の器とごはん
November 3, 2019 | Design, Food | casabrutus.com | photo_Keisuke Fukamizu text_Masae Wako
器は料理を盛ってこそ!ということで、人気作家の最新作を発表する個展に合わせて、作家本人にも料理を作ってもらっちゃおう…という無茶ぶり企画5回目。ダイナミックで使いやすいウッドボウルで大人気の木工家、須田二郎の工房を訪ねました。普段の料理が映えるボウルから木のカトラリーや調理ツールまで、350点の作品が並ぶ個展は、東京・吉祥寺の〈OUTBOUND〉で11月13日から開催!
数年前から注目されはじめた器のひとつに「ウッドボウル」がある。「サラダや果物をざっくり盛るだけでカッコいい!」「ひとつあると食卓の雰囲気が変わる」「軽くて丈夫で扱いやすい」……などなど日常の器として魅力があるのはもちろんだが、実はその力強い佇まいにひと目惚れして思わず購入という人も多い。器好き、クラフト好きとは別の方面でもファンが増えている。
木のボウルの中でも断然人気があるのは「ウッドターニング」によるもの。木工旋盤(木を削るロクロ)という機械で木の塊を回転させながら形を削り出す技法だ。今回訪ねたのは、このウッドターニングの器で知られる須田二郎。もともと木こりだった須田は、森や林から切り出された生木を使ってボウルや皿を作る。乾燥する前の、まだたっぷり水分を含んだ状態の木を削るため、それが乾く過程でゆがんだりたわんだり、時にはちょっと割れたりする、その自然な姿がすこぶる魅力なのだ。
木のボウルの中でも断然人気があるのは「ウッドターニング」によるもの。木工旋盤(木を削るロクロ)という機械で木の塊を回転させながら形を削り出す技法だ。今回訪ねたのは、このウッドターニングの器で知られる須田二郎。もともと木こりだった須田は、森や林から切り出された生木を使ってボウルや皿を作る。乾燥する前の、まだたっぷり水分を含んだ状態の木を削るため、それが乾く過程でゆがんだりたわんだり、時にはちょっと割れたりする、その自然な姿がすこぶる魅力なのだ。
須田の工房兼住居は八王子の住宅街にある。中にはいると木工旋盤やら電動研ぎ石やら、見たことのない機械がたくさん並び、壁を埋め尽くすように工具が掛かっている。天井から壁まで、至るところにクラッカーの紙テープみたいな木の削り屑が絡みついているのが、なんだかすごい。
「ウッドターニングが海外で注目され出したのは1970~80年代かな。アメリカのリチャード・ラファンという木工家が有名になって、1984年に生木を使ったゆがみのあるウッドボウルを作ったんです」
アメリカではその後、趣味としての木工旋盤を広めようとするムーブメントも巻き起こる。AAW(アソシェイション オブ アメリカン ウッドターニング)という団体のもとで旋盤や道具の改良が飛躍的に進み、安全かつ簡単に作業できるようになったのだ。
「日本にも昔から轆轤師と呼ばれる職人がいましたが、機械の進化に関しては世界の蚊帳の外。そんな中、1998年になって海外の優れた旋盤が入ってきたんですね。僕もすぐ購入して、1999年には木工旋盤で器を作り始めました。教えてくれる人も器の見本もないから、ビデオや教材を見ながらの“解体新書”状態でしたけど。自分がやりたいと思った時期と旋盤の進歩が重なったのはとても幸運なことでした」
「ウッドターニングが海外で注目され出したのは1970~80年代かな。アメリカのリチャード・ラファンという木工家が有名になって、1984年に生木を使ったゆがみのあるウッドボウルを作ったんです」
アメリカではその後、趣味としての木工旋盤を広めようとするムーブメントも巻き起こる。AAW(アソシェイション オブ アメリカン ウッドターニング)という団体のもとで旋盤や道具の改良が飛躍的に進み、安全かつ簡単に作業できるようになったのだ。
「日本にも昔から轆轤師と呼ばれる職人がいましたが、機械の進化に関しては世界の蚊帳の外。そんな中、1998年になって海外の優れた旋盤が入ってきたんですね。僕もすぐ購入して、1999年には木工旋盤で器を作り始めました。教えてくれる人も器の見本もないから、ビデオや教材を見ながらの“解体新書”状態でしたけど。自分がやりたいと思った時期と旋盤の進歩が重なったのはとても幸運なことでした」
朝10時。ウッドボウルを作るため、工房の中に置いてあったソメイヨシノの丸太をチェーンソーで切り始める。断面の真ん中あたりの赤い部分は「赤身」、周囲の白い部分は「シロタ」という。ふたつに割ったところへ木工旋盤の丸いパーツをあてて大きさを決め、チェーンソーで粗くカット。旋盤にのせやすい形にする。
「雑木林で切られた木や、宅地造成で切らざるを得なかった木材を使うので、その時々で材料は変わります」と須田。今日使っているのは町田市の園芸屋から引き取ってきたもの。伐採された木はパルプや燃料チップになることが多いが、「2トントラックいっぱいでも3000円で売り買いされてしまうほど。まったくお金にならないんです。で、調べたら、アメリカ人は生木で器やボウルを作っているという。なるほど、この木を器にすればお金になって、森や雑木林の保全を進める資金ができるのかもしれない。そう思ったのが器作りのきっかけです」
日本の森と雑木林を甦らせたい。今もその一心で木の器を作っている。「最初のころは “伐採した木で器をつくって売る” なんて言っても、“何バカなこと考えてんだ” って笑われてました。でも、20年続けてきて最近やっと、後継というか同じような作り手が出てきたような気がします」
「雑木林で切られた木や、宅地造成で切らざるを得なかった木材を使うので、その時々で材料は変わります」と須田。今日使っているのは町田市の園芸屋から引き取ってきたもの。伐採された木はパルプや燃料チップになることが多いが、「2トントラックいっぱいでも3000円で売り買いされてしまうほど。まったくお金にならないんです。で、調べたら、アメリカ人は生木で器やボウルを作っているという。なるほど、この木を器にすればお金になって、森や雑木林の保全を進める資金ができるのかもしれない。そう思ったのが器作りのきっかけです」
日本の森と雑木林を甦らせたい。今もその一心で木の器を作っている。「最初のころは “伐採した木で器をつくって売る” なんて言っても、“何バカなこと考えてんだ” って笑われてました。でも、20年続けてきて最近やっと、後継というか同じような作り手が出てきたような気がします」
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illustration Yoshifumi Takeda
Masae Wako
わこ まさえ 編集者・ライター。インテリアと手仕事と建築と日本美術にまつわる雑誌の仕事が中心。カーサブルータス本誌では〈かしゆか商店〉番頭。
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