CULTURE
ミック・ロックが撮った、美しいアウトサイダーたち。
April 28, 2017 | Culture | a wall newspaper | photo_Shinichiro Fujita text_Kastumi Watanabe
個展『DAVID BOWIE by MICK ROCK』のため、カメラマン、ミック・ロックが来日。ボウイから中村勘三郎の思い出を語る。
Q いつボウイと出会ったの?
1972年の3月、オレは24歳、デヴィッドが25歳のときだよ。『ハンキー・ドリー』(71年)を聴いて興味を持ち、ライブ前のバーミンガム・タウンホールへ会いに行ったんだ。当時、オレは雑誌の記事も書いていたから、自分でインタビューして、撮影もしていた。お互いのビジョンや趣味嗜好を話し合い、初対面から意気投合して。シューティングだけじゃなく、じっくり話ができたのが大きかった。
Q 個展『DAVID BOWIE by MICK ROCK』には、プライベート写真も展示されていましたね。
初対面から3日後には、デヴィッドの家へ行って、日常の彼を撮ることができた。ツアーにも同行して世界中のステージ、移動中やホテルの部屋でも撮っていたよ。
Q 何点くらいあるの?
デヴィッドの写真だと300点以上。彼にとって東京は特別なところだから、他の都市での展示より多めの50点をプリントした。初めて出したものもあったね。
Q ボウイが火星人を演じきった『ジギー・スターダスト』に変身する瞬間も撮っていますね。
72年に第一変体、73年はさらに進化して第二変体だ。デヴィッドはその間、山本寛斎からたくさん衣装をもらったり、歌舞伎俳優の坂東玉三郎と出会うなど、日本のカルチャーから、めちゃめちゃ大きな影響を受けていた。メイクアップアーティストのピエール・ラロッシュと歌舞伎のイメージを積極的に取り入れたんだよ。
Q あなたも18代目中村勘三郎を撮影していますね。
『平成中村座 ニューヨーク公演』(2004年)をリンカーンセンターに観に行ってね。ロックンロールを撮り続けたカメラマンだから、勘三郎も心を許してくれたんだろう。「もともと歌舞伎はアウトサイダーの表現だ」って説明してくれた。楽屋裏から稽古の風景まで、全部撮らせてくれたよ。
Q どんなところが気に入った?
美しい女性。観劇中に、思わず心を奪われたんだ。それで勘三郎に「あの女性は誰だ? 美しすぎる!」と絶賛した。褒めたら紹介してくれると思ってね(笑)。彼はニヤニヤするだけだから、自分から彼女に声をかけたんだ。それが何と勘三郎の息子(現・6代目中村勘九郎)でさ(笑)。女形なんか知らなかったから驚いた。シェイクスピアも若い男を女性が演じるし、ボウイも性別がない設定を演じていた。アウトサイダーたちの表現は、面白いものだよ。
ミック・ロック
写真家。ロンドン生まれ、現在NY在住。70年代からボウイをはじめ、ルー・リードやイギー・ポップといったレジェンドを多数撮影。2007年には日本で『魂 -MICK ROCK meets 勘三郎 写真展』を開催。3月、VACANT(原宿)での個展『DAVID BOWIE by MICK ROCK』も好評のうちに終了。