CULTURE
360度どこから食べる? 平野紗季子の“美味しさの探し方”がたっぷり詰まった10年ぶりのエッセイ集!
『カーサ ブルータス』2024年10月号より
September 18, 2024 | Culture | a wall newspaper | photo_Kenya Abe text_Hikari Torisawa
どのページを開いても味わい深い、愛が深い。平野紗季子さん、食と味のエッセイの楽しみ方を教えてください。
フードエッセイストとして美味を広く届け、多彩な活動で食いしん坊を幸せにしてきた平野紗季子。初の著書『生まれた時からアルデンテ』から10年。エッセイ集『ショートケーキは背中から』が完成した。プロローグに置かれたのは「会社員の味」だ。
「10年前はどっちが前でどっちが後ろかもわからないくらい、食べ物の輝きの乱反射に目を眩ませていましたが、様々な経験を経るうちに、食を立体的に捉えられるようになりました。何かに美味しいと感動するとき、深夜の会社の蛍光灯の下で食べた牛丼の味や、アメリカの寮の食堂で食べた “泥水のようなシチュー” こそが、感動のエレメントとして内包されていると気づけたのは大きな収穫です」
そう語られる言葉に触れると、味と人とのかかわりとは複雑に美しく、好き/嫌いの二極に分類されるものではないと気づく。
「苦手だったものを好きになる、わからないものがわかってしまう瞬間の嬉しさって格別です。ここに扉があったんだ、この先に世界が広がっていたんだ、という実感にこそ心が躍ります」
「10年前はどっちが前でどっちが後ろかもわからないくらい、食べ物の輝きの乱反射に目を眩ませていましたが、様々な経験を経るうちに、食を立体的に捉えられるようになりました。何かに美味しいと感動するとき、深夜の会社の蛍光灯の下で食べた牛丼の味や、アメリカの寮の食堂で食べた “泥水のようなシチュー” こそが、感動のエレメントとして内包されていると気づけたのは大きな収穫です」
そう語られる言葉に触れると、味と人とのかかわりとは複雑に美しく、好き/嫌いの二極に分類されるものではないと気づく。
「苦手だったものを好きになる、わからないものがわかってしまう瞬間の嬉しさって格別です。ここに扉があったんだ、この先に世界が広がっていたんだ、という実感にこそ心が躍ります」
圧巻は、つむじ風のように言葉が連なる「言いたい放題 食べたい放題 ごはん100点ノート」。「それぞれは短いテキストで、何かを食べたときにとったメモから構成しています。最近なら、『新蓮根で全ての記憶を失う』とか『命が尽きる時の味』など、瞬間に出てきた言葉を書き留めたメモが膨大にあるんですよ」
一度、目に、耳にしたら忘れ難い表題作「ショートケーキは背中から」も書き下ろしの一編だ。
「食べ物について自分が感じることって暫定的なことでしかなくて、いつでも味が自分を追い越していくんだ、という喜ばしい感覚を言葉にしてみました。自分の食に対する考え方をはっきりと伝えられるようなテキストを入れたくて、今回は5編+100点を書き下ろしました。しんどいとき、大変なときでもごはんがついているから大丈夫。この1冊をそんなふうに思えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです!」
一度、目に、耳にしたら忘れ難い表題作「ショートケーキは背中から」も書き下ろしの一編だ。
「食べ物について自分が感じることって暫定的なことでしかなくて、いつでも味が自分を追い越していくんだ、という喜ばしい感覚を言葉にしてみました。自分の食に対する考え方をはっきりと伝えられるようなテキストを入れたくて、今回は5編+100点を書き下ろしました。しんどいとき、大変なときでもごはんがついているから大丈夫。この1冊をそんなふうに思えるきっかけにしてもらえたら嬉しいです!」
『ショートケーキは背中から』
2016年以来の雑誌の連載や寄稿から選り抜いた19編と書き下ろしを収録したエッセイ集。ビジュアルは絞られ、真摯な言葉が真っすぐに届けられる。装丁は大島依提亜。カトラリーや器が静かな光を放つ装画はアレクシス・ラライヴァオの作品。平野たっての希望で実現した。1,870円。新潮社刊。
平野紗季子
1991年福岡県生まれ。小学生の頃から食日記をつけ続けている。文筆活動に加え、ラジオ/Podcast番組「味な副音声」パーソナリティ、菓子ブランド〈(NO)RAISIN SANDWICH〉を立ち上げるなど多彩に活動。著書に『生まれた時からアルデンテ』『私は散歩とごはんが好き(犬かよ)。』『味な店 完全版』がある。