CULTURE
吉阪隆正の名言「…を私はすすめたい。」【本と名言365】
July 12, 2024 | Culture, Design | casabrutus.com | photo_Yuki Sonoyama text_Housekeeper illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。戦後日本にモダニズムの思想を紹介し、自ら実践した建築家・吉阪隆正。ル・コルビュジェに師事し、素材としてのコンクリートの可能性にいち早く着目した独創的な建築を手がける一方、登山家や文明評論家としての一面も持つ。既存の枠に捉われない吉阪のすすめる「あそび」とは?
一切を賭けてのあそびである。そんなあそびを私はすすめたい
吉阪といえば、2022年に〈東京都現代美術館〉で大規模な回顧展が開催されたことが記憶に新しい。展覧会『吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる』の第6章「あそびのすすめ」では、吉阪が旅先や街中で描き続けた「パタパタスケッチ」やダイアグラム、愛用品などが展示された。これらは、自身を「アルキテクト ─ 歩きテクト」と称した吉阪が、どんな場所でも注意深く観察を行うことで、アイデアの糧を蓄え、実験し続けていたことの証左でもある。こうした吉阪の態度こそが、彼の勧める「あそび」だ。
「あそび」とは、一般的に連想される娯楽や時間潰しではない。むしろ、子どもが与えられた玩具をすぐ分解して、一体中はどうなっているのか、その仕組みを探るため無心にいじくり回す行為に似ているという。目の前の興味深い対象に全てを集中し、実験や探究に打ち込む。そして、自分の力がどこまでか試す姿勢こそが、吉阪の根本的な考えであった。この思想が、革新的な思想と確固たる技術で戦後日本のモダニズム建築の礎を築いた吉阪の源流なのだろう。
吉阪にとって、「あそび」はまさに「建築」そのものであった。多岐にわたり膨大な著作を残した吉阪の思想のエッセンスが詰まった随筆集『吉阪隆正 地表は果たして球面だろうか』に収録された「好きなものはやらずにいられない」において、吉阪は以下のように語っている。
「なぜ建築学に携わっているのかといえば、まずこの仕事が好きだから、作ることが好きだから、───という理由に勝るものはありません。(中略)学問には本来、あそびの要素があります。生み出したものが真に役立つかどうかは、わからないのです。(中略)興味しんしんで物事に取り組むこと。それがすなわち学問というものではないでしょうか。」
吉阪の「あそび」の精神は、建築だけでなく我々の生き方にも多くの示唆を与えてくれる。歳を重ねるにつれ、他者評価や過去の体験に縛られて自己の枠が規定されてゆき、コンフォートゾーンから出ていくことは難しくなってゆく。好奇心と探求心を携えて日々を過ごすためにも、吉阪の「あそび」に学びたい。
吉阪といえば、2022年に〈東京都現代美術館〉で大規模な回顧展が開催されたことが記憶に新しい。展覧会『吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる』の第6章「あそびのすすめ」では、吉阪が旅先や街中で描き続けた「パタパタスケッチ」やダイアグラム、愛用品などが展示された。これらは、自身を「アルキテクト ─ 歩きテクト」と称した吉阪が、どんな場所でも注意深く観察を行うことで、アイデアの糧を蓄え、実験し続けていたことの証左でもある。こうした吉阪の態度こそが、彼の勧める「あそび」だ。
「あそび」とは、一般的に連想される娯楽や時間潰しではない。むしろ、子どもが与えられた玩具をすぐ分解して、一体中はどうなっているのか、その仕組みを探るため無心にいじくり回す行為に似ているという。目の前の興味深い対象に全てを集中し、実験や探究に打ち込む。そして、自分の力がどこまでか試す姿勢こそが、吉阪の根本的な考えであった。この思想が、革新的な思想と確固たる技術で戦後日本のモダニズム建築の礎を築いた吉阪の源流なのだろう。
吉阪にとって、「あそび」はまさに「建築」そのものであった。多岐にわたり膨大な著作を残した吉阪の思想のエッセンスが詰まった随筆集『吉阪隆正 地表は果たして球面だろうか』に収録された「好きなものはやらずにいられない」において、吉阪は以下のように語っている。
「なぜ建築学に携わっているのかといえば、まずこの仕事が好きだから、作ることが好きだから、───という理由に勝るものはありません。(中略)学問には本来、あそびの要素があります。生み出したものが真に役立つかどうかは、わからないのです。(中略)興味しんしんで物事に取り組むこと。それがすなわち学問というものではないでしょうか。」
吉阪の「あそび」の精神は、建築だけでなく我々の生き方にも多くの示唆を与えてくれる。歳を重ねるにつれ、他者評価や過去の体験に縛られて自己の枠が規定されてゆき、コンフォートゾーンから出ていくことは難しくなってゆく。好奇心と探求心を携えて日々を過ごすためにも、吉阪の「あそび」に学びたい。
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