CULTURE
バーナード・ルドフスキーの名言「無学の工匠たちは、さまざまな時代、…」【本と名言365】
April 23, 2024 | Culture, Architecture | casabrutus.com | photo_Yuki Sonoyama text_Yoshinao Yamada illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。モダニズム全盛期にいち早くヴァナキュラー(土着的)な建築に本質的な価値を見出した建築家がバーナード・ルドフスキー。現代の建築家にも多くの影響を与える彼は、その著作でそのように「建築家なしの建築」に注目したのだろうか。
無学の工匠たちは、さまざまな時代、さまざまな地方において、建物を自然の環境に適応させることに素晴らしい才能を示している。
建築家のバーナード・ルドフスキーはいくつもの優れた著作を遺したことで知られる。なかでも有名なのが、1964年に〈ニューヨーク近代美術館〉で開催された展覧会『建築家なしの建築』の同名書籍だ。ルドフスキーは展覧会および書籍にて、自身が調査を行ったさまざまな国の風土的建築や集落を「風土的」「無名の」「自然発生的」「土着的」「田園的」という5つのキーワードで取り上げた。ここでルドフスキーは、「無学の工匠たちは、さまざまな時代、さまざまな地方において、建物を自然の環境に適応させることに素晴らしい才能を示している」と書く。
展覧会が行われた年、日本は東京オリンピックを開催した。丹下健三(丹下は展覧会の推薦者であり、本書冒頭で感謝の言葉が述べられている)が〈国立代々木競技場〉〈東京カテドラル聖マリア大聖堂(カトリック関口教会)〉といった建築で世界的評価を得た時期であり、日本はもちろん世界的にもモダニズム建築の全盛期にあった。その時代にルドルフスキーは、「これまで建築史の正系から外れていた建築の未知の世界を紹介することによって、建築芸術についての私たちの狭い概念を打ち破ること」を目指した。つまり西洋的な価値観に基づくモダニズムという建築のあり方から、周縁の建築へ目を向けようと促した。以降、多くの建築家は土地特有のヴァナキュラーな建築を目指すようになる。
本書が提示するのは、岩や樹をくり抜いた住居や教会、穴居や断崖住居群、砂漠の移動建築、そして日本からも沖縄の古代共同墓地などの「無名の工匠」によるアノニマスな建築の数々。ここでルドルフスキーは西洋的、現代的価値観でこれらの建築を低く見ることや娯楽的な観光資源として見ることに警鐘を鳴らす。これは風変わりな建築の実例集やガイドブックではないとする一方、「私たちの建築的な偏見を探検する旅の出発点を示すという意味でなら、一種の旅行案内」だと書く。
展覧会の開催および本書の発行からちょうど60年を経たいまも、その視点は古びない。むしろいよいよ重要な視点を多くの建築家に示唆しているともいえる。世界が均質化していくなかで、建築は、都市は、人はどうあるべきか。ルドフスキーは大きなヒントを与えてくれる。
建築家のバーナード・ルドフスキーはいくつもの優れた著作を遺したことで知られる。なかでも有名なのが、1964年に〈ニューヨーク近代美術館〉で開催された展覧会『建築家なしの建築』の同名書籍だ。ルドフスキーは展覧会および書籍にて、自身が調査を行ったさまざまな国の風土的建築や集落を「風土的」「無名の」「自然発生的」「土着的」「田園的」という5つのキーワードで取り上げた。ここでルドフスキーは、「無学の工匠たちは、さまざまな時代、さまざまな地方において、建物を自然の環境に適応させることに素晴らしい才能を示している」と書く。
展覧会が行われた年、日本は東京オリンピックを開催した。丹下健三(丹下は展覧会の推薦者であり、本書冒頭で感謝の言葉が述べられている)が〈国立代々木競技場〉〈東京カテドラル聖マリア大聖堂(カトリック関口教会)〉といった建築で世界的評価を得た時期であり、日本はもちろん世界的にもモダニズム建築の全盛期にあった。その時代にルドルフスキーは、「これまで建築史の正系から外れていた建築の未知の世界を紹介することによって、建築芸術についての私たちの狭い概念を打ち破ること」を目指した。つまり西洋的な価値観に基づくモダニズムという建築のあり方から、周縁の建築へ目を向けようと促した。以降、多くの建築家は土地特有のヴァナキュラーな建築を目指すようになる。
本書が提示するのは、岩や樹をくり抜いた住居や教会、穴居や断崖住居群、砂漠の移動建築、そして日本からも沖縄の古代共同墓地などの「無名の工匠」によるアノニマスな建築の数々。ここでルドルフスキーは西洋的、現代的価値観でこれらの建築を低く見ることや娯楽的な観光資源として見ることに警鐘を鳴らす。これは風変わりな建築の実例集やガイドブックではないとする一方、「私たちの建築的な偏見を探検する旅の出発点を示すという意味でなら、一種の旅行案内」だと書く。
展覧会の開催および本書の発行からちょうど60年を経たいまも、その視点は古びない。むしろいよいよ重要な視点を多くの建築家に示唆しているともいえる。世界が均質化していくなかで、建築は、都市は、人はどうあるべきか。ルドフスキーは大きなヒントを与えてくれる。
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