CULTURE
【本と名言365】バックミンスター・フラー|「私たちはすばらしい本物の宇宙船、…」
February 14, 2024 | Culture, Architecture, Design | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Ryota Mukai illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。建築家で思想家、そして発明家でもあったバックミンスター・フラー。その主著のひとつである本書は、今もなお私たちの価値観を揺さぶり続ける。
私たちはすばらしい本物の宇宙船、この地球という丸い宇宙船に乗っている。
空輸もできる構造物「ジオデシック・ドーム」を考案した建築家で、宇宙規模で地球を捉えた思想家。その多才さから現代のレオナルド・ダ・ヴィンチとも評された人物がバックミンスター・フラーだ。彼の思考を今に伝えるのが、1969年、彼が74歳になる年に発表した『宇宙船地球号 操縦マニュアル』。「私たちはすばらしい本物の宇宙船、この地球という丸い宇宙船に乗っている。」というシンプルなアイデアをもとに世界の見方を綴った、いわば哲学書だ。
テーマは簡潔、その上、文章は140ページ足らずと決して長くはないから一見手に取りやすい。とはいえ一筋縄ではいかない。例えば宇宙についてこんなことを、太字で書いている。「宇宙とは、非同時的に生起して、非同質で、部分的に重なるだけ、つねに相補的で、計量可能、あるいは計量不可能な......」といった具合。一方、建築家について具体的な言及もある。行き過ぎた専門分化が進むと種の絶滅に至るという例を引きつつ、建築家や計画家(プランナー)は専門家(スペシャリスト)といえど多少は広い視野を持っている、と。この世界に欠かせない存在だとみているのだ。
「宇宙船地球号」をテーマに人類の歴史を振り返る前半は刺激的。後半はやや難解だが、「富」とはなにかを考察したよく知られる一節なども登場して読み応えは十分。その後の年譜、注釈は非常に参考になるし、訳者あとがきにあるフラーのエピソードは印象的。なんでも大学の建築科の講演会に立ったフラーは夜7時から14時間連続で喋り続けたという。そんなエネルギッシュな彼が残した本だからこそ、半世紀を経た今でも読み継がれるのだろう。
空輸もできる構造物「ジオデシック・ドーム」を考案した建築家で、宇宙規模で地球を捉えた思想家。その多才さから現代のレオナルド・ダ・ヴィンチとも評された人物がバックミンスター・フラーだ。彼の思考を今に伝えるのが、1969年、彼が74歳になる年に発表した『宇宙船地球号 操縦マニュアル』。「私たちはすばらしい本物の宇宙船、この地球という丸い宇宙船に乗っている。」というシンプルなアイデアをもとに世界の見方を綴った、いわば哲学書だ。
テーマは簡潔、その上、文章は140ページ足らずと決して長くはないから一見手に取りやすい。とはいえ一筋縄ではいかない。例えば宇宙についてこんなことを、太字で書いている。「宇宙とは、非同時的に生起して、非同質で、部分的に重なるだけ、つねに相補的で、計量可能、あるいは計量不可能な......」といった具合。一方、建築家について具体的な言及もある。行き過ぎた専門分化が進むと種の絶滅に至るという例を引きつつ、建築家や計画家(プランナー)は専門家(スペシャリスト)といえど多少は広い視野を持っている、と。この世界に欠かせない存在だとみているのだ。
「宇宙船地球号」をテーマに人類の歴史を振り返る前半は刺激的。後半はやや難解だが、「富」とはなにかを考察したよく知られる一節なども登場して読み応えは十分。その後の年譜、注釈は非常に参考になるし、訳者あとがきにあるフラーのエピソードは印象的。なんでも大学の建築科の講演会に立ったフラーは夜7時から14時間連続で喋り続けたという。そんなエネルギッシュな彼が残した本だからこそ、半世紀を経た今でも読み継がれるのだろう。
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