CULTURE
【本と名言365】廣村正彰|「デザインは慣れ親しんだ「いつも」から、…」
February 7, 2024 | Culture, Design | casabrutus.com | photo_Yuki Sonoyama text_Yoshinao Yamada illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。どこかで一度はその仕事を目にしたことのあるであろうグラフィックデザイナー、廣村正彰の言葉からデザインに求められるものをひもときます。
デザインは慣れ親しんだ「いつも」から、新たな「何か」を期待されているのである。
日本において、グラフィックデザイナーの廣村正彰が手がけた仕事を見たことがないという人物は稀だろう。〈日本科学未来館〉〈横須賀美術館〉〈すみだ水族館〉〈東京ステーションギャラリー〉〈アーティゾン美術館〉といった公共施設、〈ロフト〉などの商業施設、ホテルや百貨店のビジュアルアイデンティティやサイン計画を手がけるのが廣村だ。一方でTOTOのウォシュレットに記されているピクトグラムのようなプロダクトに付帯するグラフィック、包装紙やショッピングバッグなども手がける。その仕事は多岐にわたり、日常にそっと潜む。
近年、大きな話題を集めた仕事が〈東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会〉のためにデザインしたオリンピック33競技50種類パラリンピック22競技23種類の動くスポーツピクトグラムだ。廣村は2015年に発表した著作『デザインからデザインまで』で「デザインは慣れ親しんだ「いつも」から、新たな「何か」を期待されているのである」と書く。オリンピック・パラリンピックのピクトグラムはその最たる例といえるだろう。1964年の東京大会でオリンピック初のピクトグラムが登場し、これは後の大会に継承される名デザインとなった。そのレガシーを継承しつつ、廣村は現代的なツールとして「動くピクトグラム」に発展させた。デザインは往々にして問題解決と提案が求められるが、その領域を拡張していくこともまたデザイナーに求められる。
時に、建築以上に空間の顔として存在するグラフィック。ピクトグラムには遊び心が求められる一方、たびたびその遊び心が視認性を低下させてSNSなどで話題になる。しかし廣村のデザインはシンプルでわかりやすく、誰しもに届くように考え抜かれている。廣村は「ものづくりにおける日本の特徴は柔軟性である」と書き、「厳しい状況を受け入れつつ、次々と新たな技をくり出す知恵とチカラが問題を解決し、独自の創造性が生まれてきた」と続ける。
本書の発表からまもなく10年が経ち、グラフィックが活躍する媒体も変化している。しかし目に届け、脳に届くというグラフィックデザインの本質は変わらない。なにをどう伝えるのか。そしてその先にどのような共感を生むか。デザインの先にあるものを探ることで感性に響く新しい何かを探し続けること。それはグラフィックを超えて、あらゆるデザインに求められる姿勢でもある。
日本において、グラフィックデザイナーの廣村正彰が手がけた仕事を見たことがないという人物は稀だろう。〈日本科学未来館〉〈横須賀美術館〉〈すみだ水族館〉〈東京ステーションギャラリー〉〈アーティゾン美術館〉といった公共施設、〈ロフト〉などの商業施設、ホテルや百貨店のビジュアルアイデンティティやサイン計画を手がけるのが廣村だ。一方でTOTOのウォシュレットに記されているピクトグラムのようなプロダクトに付帯するグラフィック、包装紙やショッピングバッグなども手がける。その仕事は多岐にわたり、日常にそっと潜む。
近年、大きな話題を集めた仕事が〈東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会〉のためにデザインしたオリンピック33競技50種類パラリンピック22競技23種類の動くスポーツピクトグラムだ。廣村は2015年に発表した著作『デザインからデザインまで』で「デザインは慣れ親しんだ「いつも」から、新たな「何か」を期待されているのである」と書く。オリンピック・パラリンピックのピクトグラムはその最たる例といえるだろう。1964年の東京大会でオリンピック初のピクトグラムが登場し、これは後の大会に継承される名デザインとなった。そのレガシーを継承しつつ、廣村は現代的なツールとして「動くピクトグラム」に発展させた。デザインは往々にして問題解決と提案が求められるが、その領域を拡張していくこともまたデザイナーに求められる。
時に、建築以上に空間の顔として存在するグラフィック。ピクトグラムには遊び心が求められる一方、たびたびその遊び心が視認性を低下させてSNSなどで話題になる。しかし廣村のデザインはシンプルでわかりやすく、誰しもに届くように考え抜かれている。廣村は「ものづくりにおける日本の特徴は柔軟性である」と書き、「厳しい状況を受け入れつつ、次々と新たな技をくり出す知恵とチカラが問題を解決し、独自の創造性が生まれてきた」と続ける。
本書の発表からまもなく10年が経ち、グラフィックが活躍する媒体も変化している。しかし目に届け、脳に届くというグラフィックデザインの本質は変わらない。なにをどう伝えるのか。そしてその先にどのような共感を生むか。デザインの先にあるものを探ることで感性に響く新しい何かを探し続けること。それはグラフィックを超えて、あらゆるデザインに求められる姿勢でもある。
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