CULTURE
【本と名言365】山本耀司|「根底にいつもあるのは、…」
November 10, 2023 | Culture | casabrutus.com | photo_Miyu Yasuda text_Yoshinao Yamada illustration_Yoshifumi Takeda design_Norihiko Shimada(paper)
これまでになかった手法で、新しい価値観を提示してきた各界の偉人たちの名言を日替わりで紹介。世代を超えて愛されるファッションブランド〈ヨウジヤマモト〉はもちろん、独特のキャラクターと美学で人物そのものにもファンの多い山本耀司。ファッション史に大きな影響を与えたその哲学とは。
根底にいつもあるのは、西洋の美学や美意識に対する反論です。
1981年、山本耀司の〈ヨウジヤマモト〉が川久保玲の〈コム デ ギャルソン〉とともにパリで発表した初めてのコレクションは、批評家によって「ヒロシマ・シック」と冷ややかに揶揄された。さらにフランスのメディアは彼らをまとめ、「レ・ジャポネ」とも呼んだ。現代であれば差別的な表現として許されないが、同時に山本や川久保へのその後の評価を考えると、こうした暴言がいかに見当外れなものであったかがわかる。その一方で絶賛するメディアもあったと山本自身は振り返る。こうしたエピソードを含め、山本自身の言葉で彼の足跡を辿る『服を作る -モードを超えて-』は、彼がなぜ人を惹きつけるのかを教えてくれる一冊だ。
山本は服で表現したいことをあえて言葉で表すと、「道徳的な人よりも、不道徳な人のほうがチャーミング」「生きるということは孤独と友達になること」などだと詩的にいう。このように創造の核心は、まさに山本独自の哲学と世界観に基づく。さらに「その根底にいつもあるのは、西洋の美学や美意識に対する反論です。」という。しかし一方で、ヨーロッパに通ううちに結果として西洋のものと融和してしまうこともあると認める。ただ融和を目的としてはならないのだとも。この姿勢が彼の創作のすべてにつながる。流れを受け止めつつ、ルールは曲げない。山本はただ予定調和な服を崩す美しさを求めただけなのだと語る。流儀に則ってないという意味では喪服の色とされていた黒を多用したこともそうだった。しかしその流儀に反したその美学はいま、ファッション史を変えた「黒の衝撃」としてよく知られる。
山本は、「ファッションというのは物書きでさえ書けない、言葉にできないものを形にする最先端の表現だと思っています。だからどんなに知性があってもファッションをばかにしている人は信用できない。たとえ評論家や建築家であってもです。着ている服でその人が本物かどうかわかります」と語る。タブーとされた黒の服、女性のための男性的な服、さらにスポーツブランドとの協業。これらはいまや当たり前にファッションの世界に浸透しているが、いずれも常識外れのアイデアだった。こうしてファッションとともに時代を切り拓いてきた山本耀司の活躍は、いまなお私たちに新鮮な発見を与えてくれるのだ。
1981年、山本耀司の〈ヨウジヤマモト〉が川久保玲の〈コム デ ギャルソン〉とともにパリで発表した初めてのコレクションは、批評家によって「ヒロシマ・シック」と冷ややかに揶揄された。さらにフランスのメディアは彼らをまとめ、「レ・ジャポネ」とも呼んだ。現代であれば差別的な表現として許されないが、同時に山本や川久保へのその後の評価を考えると、こうした暴言がいかに見当外れなものであったかがわかる。その一方で絶賛するメディアもあったと山本自身は振り返る。こうしたエピソードを含め、山本自身の言葉で彼の足跡を辿る『服を作る -モードを超えて-』は、彼がなぜ人を惹きつけるのかを教えてくれる一冊だ。
山本は服で表現したいことをあえて言葉で表すと、「道徳的な人よりも、不道徳な人のほうがチャーミング」「生きるということは孤独と友達になること」などだと詩的にいう。このように創造の核心は、まさに山本独自の哲学と世界観に基づく。さらに「その根底にいつもあるのは、西洋の美学や美意識に対する反論です。」という。しかし一方で、ヨーロッパに通ううちに結果として西洋のものと融和してしまうこともあると認める。ただ融和を目的としてはならないのだとも。この姿勢が彼の創作のすべてにつながる。流れを受け止めつつ、ルールは曲げない。山本はただ予定調和な服を崩す美しさを求めただけなのだと語る。流儀に則ってないという意味では喪服の色とされていた黒を多用したこともそうだった。しかしその流儀に反したその美学はいま、ファッション史を変えた「黒の衝撃」としてよく知られる。
山本は、「ファッションというのは物書きでさえ書けない、言葉にできないものを形にする最先端の表現だと思っています。だからどんなに知性があってもファッションをばかにしている人は信用できない。たとえ評論家や建築家であってもです。着ている服でその人が本物かどうかわかります」と語る。タブーとされた黒の服、女性のための男性的な服、さらにスポーツブランドとの協業。これらはいまや当たり前にファッションの世界に浸透しているが、いずれも常識外れのアイデアだった。こうしてファッションとともに時代を切り拓いてきた山本耀司の活躍は、いまなお私たちに新鮮な発見を与えてくれるのだ。
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