CULTURE
本で知る、染色家・柚木沙弥郎のいま。
『カーサ ブルータス』2021年3月号より
| Culture, Design | a wall newspaper | photo_Kaori Ouchi text_Yuka Uchida
98歳になってなお、若々しい感覚で制作を続ける柚木沙弥郎。その佇まいや発する言葉から、生きるヒントを学びます。
今を大切にしながら、いつまでも進化し続ける人。98歳の染色家、柚木沙弥郎の2冊の新刊からは、こんな生き生きとした人物像が浮かび上がってくる。
写真家・木寺紀雄による『柚木沙弥郎との時間』に収められているのは、アトリエでの制作風景や自宅でくつろぐ姿、国内やパリで開かれた展覧会の様子。笑顔のポートレートもあれば、食事を楽しむ何げないカット、お気に入りのおやつや、集めているオブジェも写り、ありのままの人間・柚木沙弥郎に触れられる。
もう一冊は、編集者・熱田千鶴による読み物『柚木沙弥郎のことば』。自身が担当したインタビューから、お茶の時間に繰り広げられたおしゃべりまで、公私にわたって発言を書き留め、「民藝」「アート」「暮らし」などのテーマに沿って紹介。柚木の98年の歩みを紐解く内容になっている。
写真家・木寺紀雄による『柚木沙弥郎との時間』に収められているのは、アトリエでの制作風景や自宅でくつろぐ姿、国内やパリで開かれた展覧会の様子。笑顔のポートレートもあれば、食事を楽しむ何げないカット、お気に入りのおやつや、集めているオブジェも写り、ありのままの人間・柚木沙弥郎に触れられる。
もう一冊は、編集者・熱田千鶴による読み物『柚木沙弥郎のことば』。自身が担当したインタビューから、お茶の時間に繰り広げられたおしゃべりまで、公私にわたって発言を書き留め、「民藝」「アート」「暮らし」などのテーマに沿って紹介。柚木の98年の歩みを紐解く内容になっている。
写真家と編集者。ふたりが柚木に出会ったのは2012年のとある取材がきっかけだ。その後、作品集『柚木沙弥郎 92年分の色とかたち』の制作に関わり、やがてライフワークとして共に柚木の活動を追いかけるようになった。年月にして8年。それは、がむしゃらに走ってきた作家が、体力の衰えは感じつつも、頭は冴えわたり、一層深く己の目指すところを捉えはじめていた時期。柚木本人も「80歳になってようやく自分が何者かわかってきた」と話すように、作家として、人として、きわめて充実している時間の傍らを並走し、そのすべてを丁寧に記録している。
互いに補完し合うこの2冊は、両方を手にした方が断然面白い。時系列に並べられた家族のアルバムのような写真、とりとめのない会話もそのままに残した文章。どちらの本も、本質の周辺にあるものを、削らずそのまま読者と共有するような構成で、ページをめくっているうちに、あたかも自分が柚木の隣に座っているかのような感覚になれる。
本の中で、何かに憧れることが、生きる力になると話す柚木。若輩者の我々にとっては、本を通して知る「柚木沙弥郎」その人が、生きる “憧れ” となるはずだ。
本の中で、何かに憧れることが、生きる力になると話す柚木。若輩者の我々にとっては、本を通して知る「柚木沙弥郎」その人が、生きる “憧れ” となるはずだ。

ゆのきさみろう
1922年東京都生まれ。染色家。民藝運動を率いた柳宗悦との出会いを機に、人間国宝の染色工芸家・芹沢銈介に師事。染色以外に版画、絵本、立体、切り絵などを国内外で発表。86歳でパリでの初個展を成功させるなど、衰えぬ創造力で今なお活躍する。
(c) Norio Kidera
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