ART
ターナー賞に輝いた“ワークショップ”を、銀座と益子で再現!
February 17, 2019 | Art, Architecture, Design | text_Akio Mitomi
東京・銀座の〈資生堂ギャラリー〉で、英国ロンドンを拠点に活動する建築家集団〈アッセンブル〉による展覧会が開催中。ターナー賞を受賞した〈グランビーワークショップ〉の方法論を日本で再現した、観客参加型ワークショップイベントの成果が確かめられる。
現在、〈資生堂ギャラリー〉で行われている「アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio II」と題された展覧会の主役は、英国リバプールのグランビー地区でコミュニティ再生を進めるプロジェクトに2013年から参画し、2015年にはターナー賞を受賞した建築家集団〈アッセンブル〉だ。
ターナー賞は1984年以来、アニッシュ・カプーアやダミアン・ハーストなどが受賞してきた英国現代美術のグラミー賞のような存在だが、建築の分野で受賞したのは〈アッセンブル〉が初めて。受賞対象"作品"のひとつ〈グランビーワークショップ〉がセラミック工房であることから、〈資生堂ギャラリー〉での展示に先駆けて、日本の陶芸家を訪ねてリサーチ。栃木県益子町の登り窯で日本の土を使った伝統的な焼き方を学び、独自の手法で作品を銀座と益子で制作した成果が展示されている。
ターナー賞は1984年以来、アニッシュ・カプーアやダミアン・ハーストなどが受賞してきた英国現代美術のグラミー賞のような存在だが、建築の分野で受賞したのは〈アッセンブル〉が初めて。受賞対象"作品"のひとつ〈グランビーワークショップ〉がセラミック工房であることから、〈資生堂ギャラリー〉での展示に先駆けて、日本の陶芸家を訪ねてリサーチ。栃木県益子町の登り窯で日本の土を使った伝統的な焼き方を学び、独自の手法で作品を銀座と益子で制作した成果が展示されている。
さらに今回の展示に至るまでの背景には、さまざまなストーリーが隠されている。
今から100年前の1919年に〈資生堂ギャラリー〉の前身「陳列場」を東京・銀座に開設した初代社長・福原信三は、親交のあったバーナード・リーチの紹介で富本憲吉にノベルティの製作を依頼したりするなど、のちの民藝運動の作家たちと幅広く交流していた。また20年にリーチと共に英国セントアイヴスで日本式の登り窯を築窯し英国で活動した濱田庄司は、帰国後の24年に益子へ移住、生涯の作陶の場とした。
いっぽう数十年間にわたり、ビクトリア様式のテラスハウス街が廃墟化していた英国リバプールのグランビー地区で、住民たちが地区再生に取り組み始めたのが2011年。〈アッセンブル〉は13年からさまざまなリノベーションプロジェクトに参画、15年にはタイル、ドアハンドル、暖炉などの建築用セラミック資材を生産する工房〈グランビーワークショップ〉を設立し、これらの活動がターナー賞の受賞対象となった。いまでは工房で照明器具や食器、海外のコミッションワークまでデザイナー主導の生産を行い、ビジネスとしても成功している。
今から100年前の1919年に〈資生堂ギャラリー〉の前身「陳列場」を東京・銀座に開設した初代社長・福原信三は、親交のあったバーナード・リーチの紹介で富本憲吉にノベルティの製作を依頼したりするなど、のちの民藝運動の作家たちと幅広く交流していた。また20年にリーチと共に英国セントアイヴスで日本式の登り窯を築窯し英国で活動した濱田庄司は、帰国後の24年に益子へ移住、生涯の作陶の場とした。
いっぽう数十年間にわたり、ビクトリア様式のテラスハウス街が廃墟化していた英国リバプールのグランビー地区で、住民たちが地区再生に取り組み始めたのが2011年。〈アッセンブル〉は13年からさまざまなリノベーションプロジェクトに参画、15年にはタイル、ドアハンドル、暖炉などの建築用セラミック資材を生産する工房〈グランビーワークショップ〉を設立し、これらの活動がターナー賞の受賞対象となった。いまでは工房で照明器具や食器、海外のコミッションワークまでデザイナー主導の生産を行い、ビジネスとしても成功している。
今回、銀座と益子を結ぶ展覧会のために〈アッセンブル〉が採用したのがスリップキャスティング(鋳込み成型)という手法。〈資生堂ギャラリー〉に大量に運び込まれた直径の異なる円筒形の石膏型を、ワークショップイベントの参加者が自由に選び、無限の組合せから日常的かつ実験的な器を生み出す試みだ。そのため〈資生堂ギャラリー〉の空間は約1週間、グランビーの工房のようになった。こうして組み上がった型に流し込まれる液状クレイは、益子の土と東日本大震災でがれきとなった益子産陶器の破片のミックス。約1,000℃の1次焼成で約1週間にわたる銀座でのワークショプを終え、益子へと運ばれた。
益子では、釉薬をかけたりする準備作業を経て、約1,250℃の高熱で約10日間の2次焼成が、地元の陶芸家・鈴木稔が震災の被害から復興した登り窯で行われた。薪の火から生じる灰や煙が作品に影響し、仕上がりがどうなるかは窯出しの瞬間まで分からない。
できあがった作品は現在〈資生堂ギャラリー〉で展示中。会場で配られるハンドアウト資料のほかには詳しい解説をあえてせず、並べられた完成品と大量の石膏型や、クレイで汚れたエプロンの展示と映像が、ワークショップの過程をイメージさせる。
単に日本の陶芸の方法を取り入れるのではなく、円筒形をランダムに組み合わせる独自のスリップキャスティングを、益子の土や伝統的な焼成方法と融合させた今回の挑戦は、今後の〈グランビーワークショップ〉の実践にもフィードバックされていくという。
単に日本の陶芸の方法を取り入れるのではなく、円筒形をランダムに組み合わせる独自のスリップキャスティングを、益子の土や伝統的な焼成方法と融合させた今回の挑戦は、今後の〈グランビーワークショップ〉の実践にもフィードバックされていくという。
「アートが日常を変える 福原信三の美学 Granby Workshop : The Rules of Production Shinzo Fukuhara/ASSEMBLE, THE EUGENE Studio II」
〈資生堂ギャラリー〉東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1 TEL 03 3572 3901。〜3月17日。11時〜19時(日曜・祝日〜18時)。月曜休。無料。