ART
ボルタンスキーの迷宮へ。|青野尚子の今週末見るべきアート
February 15, 2019 | Art, Design | casabrutus.com | photo_Manami Takahashi text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
2016年、〈東京都庭園美術館〉で個展を開いたクリスチャン・ボルタンスキー。その際「2019年にパワーアップして帰ってくる」と予告していた。その言葉を裏切らない個展が大阪でスタート! 予想を超えた空間が広がっています。
クリスチャン・ボルタンスキーはフランスを代表する現代アーティスト。2011年にはヴェネチア・ビエンナーレのフランス館代表になったこともある。今年は大阪を皮切りに東京、長崎と巡回する大規模な個展だけでなく、パリの〈ポンピドゥー・センター〉でも個展を開く予定だ。日本では1990年に〈ICA Nagoya〉と〈水戸芸術館〉で個展を開催、最近では越後妻有で廃校になった学校にインスタレーションを設置した《最後の学校》(ジャン・カルマンとの共作)、瀬戸内海の豊島で大切な人の名を短冊に書いて風鈴に吊るす《ささやきの森》、心臓の鼓動を録音し、そこに行くと聞くことができる《心臓音のアーカイブ》といった恒久設置作品でも知られている。
今回の個展は大阪の〈国立国際美術館〉の地下3階のフロア全体を使った大がかりなものだ。大半が地下に埋まった建物の下層に降りていくと、まず青い光で「DEPART」(出発)と書いたサインが出迎える。そこから先には彼の初期から現在進行形ともいえる最新作までが並ぶ。オブジェやインスタレーション、映像、写真などによる彼の作品は一つひとつの境界線がはっきりしない。複数の作品の間をさまよっていくうちに、一つの大きな作品の中を進んでいくようにも感じられる。
「私は観客が作品の前に立つのではなく、作品の中に入り込めるようなものを作りたいと思っています」とボルタンスキーは言う。
越後妻有の《最後の教室》などもそうだが、今回の個展会場も全体に暗い。照明を落とした展示空間に弱い光で照らされた写真や古着がぼんやりと浮かび上がる。見る者は地底の迷路か作家自身の体内を巡っていくような気分に陥る。
越後妻有の《最後の教室》などもそうだが、今回の個展会場も全体に暗い。照明を落とした展示空間に弱い光で照らされた写真や古着がぼんやりと浮かび上がる。見る者は地底の迷路か作家自身の体内を巡っていくような気分に陥る。
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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