ART

【インタビュー】日常の些細な発見が愛おしく思える『鈴木康広展ただいま、発見しています。』が開催中。

August 9, 2024 | Art, Design | casabrutus.com | photo_Masanori Kaneshita text_Keiko Kamijo

目が描かれた葉が舞い降りてくる際にまばたきに見える《まばたきの葉》や、海や川を切り開いているように見える《ファスナーの船》等、日常に潜む小さな“発見”を作品化してきた、アーティスト鈴木康広の個展『ただ今、発見しています。』が二子玉川ライズスタジオ & ホールにて開催中だ。タイトルの「発見」そして、「発券」に込めた思いを鈴木に聞いた。

鈴木の代表作とも言える《まばたきの葉》2003年。観客が床に落ちた葉を中央の塔に入れると、葉がクルクルとまばたきをしながら舞い降りてくる。

会場には葉の形をした紙も用意されており、表裏に自由に目を描くこともできる。

「ただ今、発見しています」。この展覧会タイトルに聞き覚えはないだろうか。そう、駅で切符を発券する時に券売機から発せられるアナウンスである。アーティストの鈴木康広は、ある時「発券」を「発見」と聞き間違えた。そのエピソードからこの展覧会は始まったと鈴木は言う。

「僕は小さな頃から物分かりが悪くて、いつまでもわからないままずっと過ごしてきました。子どもの頃に感じた違和感や疑問は大人になってもずっと気になり続けていて、それを改めて発見するための道具をつくること、それが作品づくりになっているような気がします。世界をとらえ直すための道具づくりというか。Bunkamuraの方からこの企画を相談された時に、『アートとまだ出会っていない人を対象に、美術の面白さを伝えたい』と言われました。その時に、美術の発見、という言葉が浮かんできて、以前体験した発券機のエピソードを思い出し、“発見”そのものをテーマにしたらいいんじゃないか、という話になりました。

『ただいま発見しています』って、現在進行形ですよね。『発見しました』『発見する』とは言うけど、少し違和感を感じると思います。でも、今、この瞬間にも発見し続けている人はいるはずです。何かに夢中になっている子どもも、実はその子にしかわからない発見をしているけど自分では気づいていない。世界は“発見”に満ちている、ということに展示を通して気づいてもらえたら」