ART
石元泰博の欧州過去最大の回顧展が、パリで開催。
『カーサ ブルータス』2024年8月号より
July 15, 2024 | Art | a wall newspaper | text_Chiyo Sagae
日本の視覚文化史を変革した写真家、石元泰博の回顧展がパリのアートセンター〈ル・バル〉で開催中です。
17世紀建造の〈桂離宮〉にモダニズムを見出し、かつて誰も見たことのない姿を捉えた写真家、石元泰博が世界の視覚文化史に与えた影響は計り知れない。写真・映像文化に特化し、フランスで見過ごされてきた世界の重要作家を紹介するパリのアートセンター〈ル・バル〉にとって、この写真展開催はいわば必然だった。〈高知県立美術館 石元泰博フォトセンター〉所蔵の3万5000点の作品からヴィンテージプリントにこだわり169点を精選しての、欧州初の大回顧展を実現した。
アメリカに生まれ、高知で少年時代を過ごし、太平洋戦争直前に単身渡米。戦中の収容所生活の後、シカゴのインスティテュート・オブ・デザイン(通称ニュー・バウハウス)に入学した石元。写真を学ぶ以前に、建築や美術への感覚の訓練に2年を費やす教育が、彼独自の感覚を開花させた。「石元の眼差しは、 “間 ” をつかみ取る」とキュレーターのディアンヌ・デュフール。 “間 ” は、洋の東西、被写体に対する外からの視線と内的経験を伴う独自の距離感でもある。だからこそ、その表現はより深い理解を見る者に促す。
Loading...