ART
初期から晩年まで、充実のマティス・コレクションへ|青野尚子の今週末見るべきアート
June 20, 2023 | Art | casabrutus.com | photo_Shin-ichi Yokoyama text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
国内ではおよそ20年ぶりになるマティスの個展が上野の〈東京都美術館〉で開かれています。初期から晩年の〈ヴァンスの礼拝堂〉まで、彼の色彩と形態の実験を追うことができる展覧会です。
1869年、フランス北部の町、カトー=カンブレジで生まれたアンリ・マティスは1892年にパリに出て国立美術学校でギュスターヴ・モローに学ぶ。1900年ごろ、コルシカ島で初めて地中海の強い陽光を浴びたのをきっかけに、1912年から13年にかけてモロッコに、1917年末には第一次世界大戦の戦禍を避けて南仏ニースに滞在する。
冬のニースでは雨が続いたが、ある日、陽が差して周囲が「銀色がかった光」に包まれた。その光に魅せられたマティスは没するまで、ときおりパリやタヒチに滞在しながらもほとんどの時間をニースやその近くのヴァンスで過ごすことになる。
冬のニースでは雨が続いたが、ある日、陽が差して周囲が「銀色がかった光」に包まれた。その光に魅せられたマティスは没するまで、ときおりパリやタヒチに滞在しながらもほとんどの時間をニースやその近くのヴァンスで過ごすことになる。
『マティス展』は世界最大規模のマティス・コレクションを誇るポンピドゥー・センターの全面的な協力のもと、開かれている回顧展。現在、よく知られているマティス独特の鮮やかな色彩に移行する前の初期作品から始まる。生まれ故郷のフランス北部や絵を学んだパリの陽光が南仏に比べると弱かったせいか、初期の作品は落ち着いた暗い色彩が目立つ。
転機になったのは1904年に印象派の画家、ポール・シニャックと南仏サン=トロペに滞在したことだった。《豪奢、静寂、逸楽》はシニャックらの点描による表現の影響が色濃く見られる作品。色彩が花火のように画面中に飛び散っているように見える。
転機になったのは1904年に印象派の画家、ポール・シニャックと南仏サン=トロペに滞在したことだった。《豪奢、静寂、逸楽》はシニャックらの点描による表現の影響が色濃く見られる作品。色彩が花火のように画面中に飛び散っているように見える。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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