ART
【インタビュー】イケムラレイコによる、ガラス彫刻と絵画のダイアローグ。
| Art, Design | casabrutus.com | photo_Shigeo Muto text_Mari Matsubara editor_Keiko Kusano
2019年の〈国立新美術館〉での大規模個展が記憶に新しいイケムラレイコの個展が東京・六本木の〈シュウゴアーツ〉で始まっている。展示のために活動拠点のドイツから来日したイケムラに、ギャラリーで話を聞いた。
40年以上にわたる作家活動の中でドローイング、水彩、ペインティング、陶、ブロンズ、写真と様々なメディアによる表現を続けてきたイケムラだが、近年はガラス彫刻に取り組んでいるという。今回の展示はペインティング6点にガラス彫刻が6点。ガラス作品がまとまった数で展示されるのは、日本では初めてのことだ。まずギャラリーに入ると、薄暗い前室にはガラス彫刻5点が置かれている。振り返ると背後の壁にペインティングが1点。
「ガラス彫刻の中には色彩と透明さ、具象と抽象が一緒に入っています。ペインティングにも色と透明さや形の動きは含まれているので、いわゆる抽象画ではないですね。絵画だと、描くプロセスの中でフィギュアが消えていってしまうこともあります。しかしガラス彫刻だと、色や形がカチッと出てきますね。
ガラス彫刻でフィギュアを表現できるからこそ、絵のほうではもっと自由になれる。だから、ガラスとペインティングは互いを補完し合う存在だと言えます。そこで、この部屋はガラスとペインティングのダイアローグ的な空間にしようと考えて、ペインティングも1点展示することにしました」(イケムラレイコ)
「ガラス彫刻の中には色彩と透明さ、具象と抽象が一緒に入っています。ペインティングにも色と透明さや形の動きは含まれているので、いわゆる抽象画ではないですね。絵画だと、描くプロセスの中でフィギュアが消えていってしまうこともあります。しかしガラス彫刻だと、色や形がカチッと出てきますね。
ガラス彫刻でフィギュアを表現できるからこそ、絵のほうではもっと自由になれる。だから、ガラスとペインティングは互いを補完し合う存在だと言えます。そこで、この部屋はガラスとペインティングのダイアローグ的な空間にしようと考えて、ペインティングも1点展示することにしました」(イケムラレイコ)
ブルー、イエロー、赤、グリーン、白……それぞれの彫刻が自ら発光しているかのように色彩を放ってそこにある。あまりにも美しい色彩そのものがポツポツと空間に灯っているようで、全体がひとつの色のコンポジションのようにも見える。
「私にとって大事なのは、ガラス彫刻の影です。ほんの少し浮かせて台座に置かれた彫刻の際の部分に、色のグラデーションの影が出ます。シルエットがまるで風景のようでしょう? これまでもずっと『見えないものをどうやって見えるものとして表すか』ということが、私の作品づくりにおいて重要な命題でした。ガラスの内側にコンパクトに潜んでいる光や、透明性が醸し出す世界を、今回はガラス彫刻をインスタレーションすることで可視化したかったのです」
「私にとって大事なのは、ガラス彫刻の影です。ほんの少し浮かせて台座に置かれた彫刻の際の部分に、色のグラデーションの影が出ます。シルエットがまるで風景のようでしょう? これまでもずっと『見えないものをどうやって見えるものとして表すか』ということが、私の作品づくりにおいて重要な命題でした。ガラスの内側にコンパクトに潜んでいる光や、透明性が醸し出す世界を、今回はガラス彫刻をインスタレーションすることで可視化したかったのです」
キャンバスから離れて陶やブロンズ作品も制作するなど、自身の表現のためには異なる技法にも果敢に取り組んできたイケムラ。それにしてもガラスとは、全く異なる世界なのではないかと想像するが――。
「数年前から少しずつ、アトリエの中に設置した窯でガラス作品を作ってきました。30年以上前からずっとセラミックを扱っていますが、その時に使う釉薬はすべてガラス質が入っているので、ガラスとの関係性は昔からあったわけです。陶芸とガラスはつながっていますし、私にとってガラス作品をつくるのは本当に自然なことでした」
ガラス彫刻は、イケムラが陶やペインティングでこれまでに発表してきた作品を思い出させるものが多い。横たわる頭から小さな木が生えている白いガラス彫刻は、陶の作品《Trees out of Head》(2015)を思い出させ、尻尾のある頭部が横たわる赤いガラス彫刻は、イケムラの作品に何度も登場する猫のミコを連想させる。
「数年前から少しずつ、アトリエの中に設置した窯でガラス作品を作ってきました。30年以上前からずっとセラミックを扱っていますが、その時に使う釉薬はすべてガラス質が入っているので、ガラスとの関係性は昔からあったわけです。陶芸とガラスはつながっていますし、私にとってガラス作品をつくるのは本当に自然なことでした」
ガラス彫刻は、イケムラが陶やペインティングでこれまでに発表してきた作品を思い出させるものが多い。横たわる頭から小さな木が生えている白いガラス彫刻は、陶の作品《Trees out of Head》(2015)を思い出させ、尻尾のある頭部が横たわる赤いガラス彫刻は、イケムラの作品に何度も登場する猫のミコを連想させる。
「生命の不思議や生きているものの強さ、次を生もうとする力を表現したい。だからキノコがむくむくと生えてくるさまや、鳥と人間の頭部が一体化した造形があったりします。人間も動物も区別がないですから。それは、山や木や生きとし生けるものに生命や神が宿っているという日本的なアニミズムが私自身に根付いているからかもしれません。それは信仰というより信条です。その原初の意識を呼び起こしたいと思うのです」
「ファンタジーと人は言うかもしれませんが、私たちが目で見ているものは、実はそれほど確かなことばかりではないと思うのです。『これは現実ではない、ファンタジーだ』と思い込んでいるものが、実はよく目を凝らしてみれば現実に見つかることもある。だから、目で見えることと見えないことをあまり区別したくないのです。それによって私たちはもっともっと癒されるし、精神的に豊かな世界を持てるのではないでしょうか」
次の部屋に進むと、ペインティングが5点、自然光が入る低い窓辺にガラス彫刻が1点置かれている。ペインティングは赤を基調とした1点のほか、4点は黒をベースにして、いろんな色が飛び交っている。暗闇に弾ける花火のようでもあり、動き回るライトの軌跡のようでもあり、戦時の夜空に飛び交う閃光弾のようにも見える。
「ファンタジーと人は言うかもしれませんが、私たちが目で見ているものは、実はそれほど確かなことばかりではないと思うのです。『これは現実ではない、ファンタジーだ』と思い込んでいるものが、実はよく目を凝らしてみれば現実に見つかることもある。だから、目で見えることと見えないことをあまり区別したくないのです。それによって私たちはもっともっと癒されるし、精神的に豊かな世界を持てるのではないでしょうか」
次の部屋に進むと、ペインティングが5点、自然光が入る低い窓辺にガラス彫刻が1点置かれている。ペインティングは赤を基調とした1点のほか、4点は黒をベースにして、いろんな色が飛び交っている。暗闇に弾ける花火のようでもあり、動き回るライトの軌跡のようでもあり、戦時の夜空に飛び交う閃光弾のようにも見える。
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