ART
石川県・能登半島の先端で歴史と人が交わるアート『奥能登国際芸術祭2020+』へ。
October 16, 2021 | Art, Design, Travel | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
能登半島のさらに奥、先端にある石川県珠洲市で開かれている『奥能登国際芸術祭2020+』。「さいはて」の地に「最先端」のアートが集います。静かな海と山に歴史が積層する、特別な場所で見る作品は格別です。今年登場した新作を中心にご紹介します。
北陸から佐渡島に向かって突き出しているような能登半島。かつて大陸から渡ってくる人や文化は能登半島に上陸し、ここから日本各地に拡散していった。また北海道から北陸、瀬戸内海を経て大阪・堺に物資を運ぶ北前船の寄港地としても栄えた。海路にかわって陸路が中心となった今では一見、「最涯(さいはて)」のように感じられるが、長い間日本列島の中でも最先端をいく地だったのだ。
ここで開かれる「奥能登国際芸術祭」は今回で2回目。2017年に開かれた1回目の作品の中には恒久設置されているものもあり、さらに充実したアート体験ができる。
ここで開かれる「奥能登国際芸術祭」は今回で2回目。2017年に開かれた1回目の作品の中には恒久設置されているものもあり、さらに充実したアート体験ができる。
その能登半島の、海沿いに作られた道を車で走っていくと山が近くに迫る。山林はきれいに手入れされていて、真っ直ぐに伸びた木が並ぶ。山の道沿いにはときどき小さな階段が現れ、上には祠や鳥居が見える。街中や、田や畑の奥にも神社が点在する。ここに住む人々が土地を大切に守ってきた証だ。
その歴史は山や神社だけでなく、人々の家の中にも眠っている。古い家々の蔵には家具や什器が大切にしまわれ、残されている。中には「ヨバレ」という風習で使われた立派な赤御膳なども。〈スズ・シアター・ミュージアム「光の方舟」〉では「珠洲の大蔵ざらえ」として、地域の人たちからさまざまな生活の道具を集め、道具が歌い踊るかのようなシアター状のミュージアムに仕立てた。周囲には久野彩子ら複数の異なる作家による小部屋があり、それぞれが長年働いてきた道具へオマージュを捧げている。構成には〈国立歴史民俗博物館〉の川村清志がアドバイザーとして参加した。既存のミュージアムとは違う形で珠洲の民俗文化を楽しめる。
能登には「あえのこと」という神事がある。豊作を願って正月に田の神様を迎えてもてなすという行事だ。面白いのは「夫婦で来る」という田の神は目に見えない存在であること。田から神を迎え、御膳の料理を説明し、風呂に案内し、最後にまた田にお送りして豊作をお願いするという一連の儀式は、端から見ていると迎える人間がひとりで行っているように見える。
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