ART
ダミアン・ハーストの新シリーズ、テーマは「桜」。
『カーサ ブルータス』2021年9月号より
| Art | a wall newspaper | photo_Prudence Cuming Associates. text_Housekeeper
揺るぎない信念を持ちながら新たな表現方法を模索し続け到達したハーストの新境地となるシリーズが公開。
根源的かつ不可避である「生と死」をアートとして昇華させ、時に度肝を抜く大胆な作風で新たな価値観を生み出しているイギリスの人気現代アーティスト、ダミアン・ハースト。新シリーズとなる《Cherry Blossoms》を展示する個展がパリの〈カルティエ現代美術財団〉で開催中だ。
《Cherry Blossoms》シリーズは、印象主義と点描画法、アクションペインティングを参考に、多様な要素を融合して描かれている。テーマについて「どこか野暮ったい部分がある」とハーストが話すように、主題自体は風景画の伝統的なものだ。しかし、近年さまざまな手法で絵画表現や奥行き、色彩の可能性を探求し続けてきた彼にとって、集大成であり、新境地ともいえるものになっている。ハーストは今作についてこう語る。
《Cherry Blossoms》シリーズは、印象主義と点描画法、アクションペインティングを参考に、多様な要素を融合して描かれている。テーマについて「どこか野暮ったい部分がある」とハーストが話すように、主題自体は風景画の伝統的なものだ。しかし、近年さまざまな手法で絵画表現や奥行き、色彩の可能性を探求し続けてきた彼にとって、集大成であり、新境地ともいえるものになっている。ハーストは今作についてこう語る。
「木を眺めていたときに、赤や青の細かい色彩を目にしたのです。光にはありとあらゆる色が含まれていて、木の葉が光を受けて反射するから、いろんな色彩が見えるんだということに気づきました。こうした細かい色彩を入れなければ、目はそれを花として認識しないのです。そこで私は、赤や黄、オレンジ、あるいは桜の花にはないはずのさまざまな色彩を足していきました。すると、絵画全体が生き生きと活気づいてきたのです」
多彩な色を無数に塗り重ねた濃厚な筆致は、まるで本物の桜と対峙しているかのような錯覚をもたらす。そして、美しく咲き誇る力強くもはかない存在が、「生と死」という生命の真実を突きつける。ハーストの信念は、今作でも一貫して揺るぎない。
「この作品は、若い頃からずっと描きたかった絵だけど、これまで勇気がなく描けなかったようなものだと感じています」
丸3年の時間を費やし、ハーストが自身と向き合うことで到達した新たな表現の世界に注目だ。
「この作品は、若い頃からずっと描きたかった絵だけど、これまで勇気がなく描けなかったようなものだと感じています」
丸3年の時間を費やし、ハーストが自身と向き合うことで到達した新たな表現の世界に注目だ。
ダミアン・ハースト
イギリスの現代アーティスト。 80年代の英国アートを代表する「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト」の中心的存在としてアートシーンを牽引。創作は彫刻やインスタレーション、絵画など多岐にわたる。今回の個展が初のフランスでの美術館展示となる。
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