ART
SANAAの空間で見る内藤礼の“創造”とは?|青野尚子の今週末見るべきアート
July 23, 2020 | Art | casabrutus.com | photo_Manami Takahashi text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
2018年、磯崎新設計の〈水戸芸術館〉での個展でも鮮烈な印象を残した内藤礼。今度はSANAA設計の〈金沢21世紀美術館〉で大規模な個展を開いています。繊細なオブジェに細やかな光が宿る作品を設置したばかりの作家に話を聞きました。
内藤礼がつくるものは、ときに光の中に溶けていってしまうのでは、と思えるほどだ。今回の個展の会場はSANAAが設計した〈金沢21世紀美術館〉。ガラス面の多い円形の建物の中に、独立した箱のような展示室が点在している。展示室の入口や窓から空や常設作品が見えることもある、個性的な空間だ。内藤は瀬戸内海の〈豊島美術館〉ではSANAAの西沢立衛と設計段階からコラボレーションしている。場の特性を細やかに読み解く彼女は、〈金沢21世紀美術館〉でも建築と軽やかに絡み合うインスタレーションを作り出した。
会場に入っていくと最初に目に入るのは、窓越しにたたずむ2人の小さな「ひと」。この作品がある「展示室7」に入ることはできない。隣接する「展示室8」に入ると、向こうに同じような「ひと」がいて、そのわきには水がしたたり落ちる。言われないと見逃してしまいそうだが、鏡や糸もある。
「ここは原初の光景。水があるところに、ひとがいる」(内藤礼)
会場に入っていくと最初に目に入るのは、窓越しにたたずむ2人の小さな「ひと」。この作品がある「展示室7」に入ることはできない。隣接する「展示室8」に入ると、向こうに同じような「ひと」がいて、そのわきには水がしたたり落ちる。言われないと見逃してしまいそうだが、鏡や糸もある。
「ここは原初の光景。水があるところに、ひとがいる」(内藤礼)
「展示室8」からは、最初に見えた2人のひとがいる「展示室7」も見える。入ることのできない「展示室7」にも水や糸があるのだという。同じものが2つ繰り返される、その関係性は展覧会のタイトルである「うつしあう創造」とも呼応する。
「人と自然、作家と作品、鑑賞者と作品、生と死、私とあなた、対立しているように見えるものは本来、分かちがたいものであって、2つに分かれたからこそ“うつしあい”が始まる。その間に生気、慈悲が生まれる、と感じているんです」と作家は言う。
「人と自然、作家と作品、鑑賞者と作品、生と死、私とあなた、対立しているように見えるものは本来、分かちがたいものであって、2つに分かれたからこそ“うつしあい”が始まる。その間に生気、慈悲が生まれる、と感じているんです」と作家は言う。
「うつしあう」ことは「まねぶ」ことにも通じる、とも言う。
「学びは“まねび”、ままごと。芸術活動に限らず私たちは、自然への畏敬や感謝、憧れから反射と再現を無限に繰り返す。創造の奥にそういった“うつしあい”がある」(内藤)
「学びは“まねび”、ままごと。芸術活動に限らず私たちは、自然への畏敬や感謝、憧れから反射と再現を無限に繰り返す。創造の奥にそういった“うつしあい”がある」(内藤)
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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