ART
古典と現代をマッシュアップ! アートのタイムトラベルへ|青野尚子の今週末見るべきアート
July 9, 2020 | Art | casabrutus.com | photo_Takuya Neda text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
「新旧の日本の美術が出合ったら?」を実験した『古典×現代2020ー時空を超える日本のアート』展。時代やジャンルを超えた組み合わせが意外な発見をさせてくれます。
国立新美術館で開かれている「古典×現代2020 時空を超える日本のアート」展は花鳥画と川内倫子、仏像と田根剛、北斎としりあがり寿など日本美術史の巨匠と、若手からベテランまで現代作家を組み合わせた展覧会。8つの展示室に一組ずつ、作家たちが登場する。
「海外では古い時代の美術と現代美術を対比させるといった展示はときどき見かけますが、日本ではあまり見ないな、と思ったのがきっかけのひとつでした。そもそも日本の『美術』は明治時代に生まれた概念で、確固たる枠組みがあったわけではありません。その明治以前の日本美術に現代日本を代表する美術や建築、デザインなどを組み合わせたら何が見えてくるのだろう、と思ったんです」と担当学芸員の長屋光枝さんは言う。
「海外では古い時代の美術と現代美術を対比させるといった展示はときどき見かけますが、日本ではあまり見ないな、と思ったのがきっかけのひとつでした。そもそも日本の『美術』は明治時代に生まれた概念で、確固たる枠組みがあったわけではありません。その明治以前の日本美術に現代日本を代表する美術や建築、デザインなどを組み合わせたら何が見えてくるのだろう、と思ったんです」と担当学芸員の長屋光枝さんは言う。
●仙厓×菅木志雄
会場では8組の作家がそれぞれインスタレーションを制作したような構成になっている。ゆるい禅画で人気の仙厓義梵と組んだのは菅木志雄だ。仙厓の軸は禅画でよく描かれる円相に「これくふて(食うて)茶まいれ」、これを食べてお茶でもどうぞ、との賛がある一品。完全なものや悟りを象徴するとされる円相を饅頭に見立てているのだ。親しみやすいユーモアで禅の教えを示す。
その前に大きく広がる菅の立体作品は円形の金属板や木や石、竹などを組み合わせたもの。作品からどのようなことを読み取るか、観客に任されているのが現代美術の特徴だが、禅画にも同じことが言える。筆でぐるっと描いた円や床に置かれた大きな円を宇宙の真理と考えるかお茶菓子と見立てるか、そこにはどんな意味があるのか、行きつ戻りつしながらさまざまなことを考えるのが悟りへの第一歩だ。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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