ART
ロックダウン中の人々によって撮影された無数の写真を繋ぐ、巨大なアート。
| Art | casabrutus.com | text_Tomoko Sakamoto
2013年にハッセルブラッド国際写真賞を受賞したジョアン・フォンクベルタ。スペイン・カタルーニャの人々がロックダウン中に撮影した写真約6万枚を繋いだ、巨大な一枚のアートを制作している。
ジョアン・フォンクベルタ。写真界のノーベルと呼ばれるハッセルブラッド国際写真賞の2013年の受賞者で、日本では荒俣宏によって和訳が紹介された『スプートニク』『秘密の動物誌』などの書籍によってその名前を知る人もいるかもしれない。ちなみに両書ともフォトショップによって緻密に加工された写真を添えて書き上げられたフィクショナル・ドキュメンタリーで、「奇書」と称されることもあるが、写真とは何か、何が写真を「信ずるに値するもの」と私たちに感じさせるのかということを鮮やかに説明してくれる傑作である。
彼の作品はいつも「写真」という形こそとってはいるが、彼のことを写真家とは呼ぶべきではないかもしれない。彼は写真を見る私たちの知覚、情報の信憑性、メディアとその影響力など「写真の持つ力」について問い続けるアーティストであり、研究者、教育者、そして批評家でもある。
今回、彼の最新作で現在制作中の《Mirades des del confinament (ロックダウンの中から見えたもの)》について話を聞くためにインタビューを行った。このプロジェクトで、彼はカタルーニャの人々からロックダウン中に撮影した写真を集め、その一枚一枚をピクセルにした巨大な写真をつくろうとしているという。Googlegrames(グーグルグラム)というプログラムを使って繋ぎ合わされた写真群が、全体として一つの写真をつくるというものである。
彼の作品はいつも「写真」という形こそとってはいるが、彼のことを写真家とは呼ぶべきではないかもしれない。彼は写真を見る私たちの知覚、情報の信憑性、メディアとその影響力など「写真の持つ力」について問い続けるアーティストであり、研究者、教育者、そして批評家でもある。
今回、彼の最新作で現在制作中の《Mirades des del confinament (ロックダウンの中から見えたもの)》について話を聞くためにインタビューを行った。このプロジェクトで、彼はカタルーニャの人々からロックダウン中に撮影した写真を集め、その一枚一枚をピクセルにした巨大な写真をつくろうとしているという。Googlegrames(グーグルグラム)というプログラムを使って繋ぎ合わされた写真群が、全体として一つの写真をつくるというものである。
フォンクベルタは10年前、リオハ地方にある小さな村の住民150人全員の家族アルバムを用いたグーグルグラムを作って以来、「一般写真」の持つ可能性とその力を追求し続けている。「これはギリシャ、ローマ、アラブで古代から用いられてきた手法、モザイクタイルを現代の素材に置き換えただけのもの。ひとつひとつの写真がつくるモザイク素材の美しいテクスチャがとても気に入っている」という。著名なタイルメーカー、クメイリャの手によってデジタル写真(群)はセラミックタイルに印刷され本物の壁画となり、その後同じ手法を用いて2014年には4×10メートルの壁画《世界はキスから始まる》という作品がバルセロナの旧市街に設置された。距離を置いて見える大きな一枚の画像(唇のアップ)が、その壁に一歩づつ近づくにつれて一枚一枚の無数の写真(10x12 cm)に拡大されていくという鑑賞体験はフラクタルのように圧巻で、デジタル化された写真の世界にも、私たちの身体というスケール感が確かに存在することを思い出させてくれる。
今回このプロジェクトはもともと新型コロナウイルスが広がり始める前に、カタルーニャの自治権拡大と独立運動を推し進める文化組織オムニウムの依頼で、多くの人々が参加して大きな写真を作るという計画として始まったという。毎夏バルセロナで開催される人気のミュージック・フェスティバル、クルイリャも、音楽だけでなくオーディオ・ビジュアルやグラフィック・アートへ招待アーティストの分野を広げようとしていたことから喜んで協賛することになったが、そんな矢先にロックダウンが始まってしまった。
さまざまなイベントが中止、延期、縮小される中でフォンクベルタは「この不安に満ちた日々の中で、コレクティブ(集まること、皆でつくること)という言葉の意味が大きく変わってしまった。だからこそ今この特別な時間を生きる証人としての私たちのポートレートを作りたい」と思いを固めたという。「とにかく大きいものにする予定だ。高さ4メートル、幅は80とか100メートルにもなるかもしれない。とてつもなく制作費がかかりそうなので資金の工面をクリアしなければならないが、今年、全体像を発表し、来年の夏のフェスティバルに向けて制作を進めていきたい」とのこと。完成した作品が見られるのはまだ先のことになりそうだが、私たちのロックダウンの記憶がこんな形で遠い未来へと保存されることを想像すると、今から楽しみで仕方がない。
さまざまなイベントが中止、延期、縮小される中でフォンクベルタは「この不安に満ちた日々の中で、コレクティブ(集まること、皆でつくること)という言葉の意味が大きく変わってしまった。だからこそ今この特別な時間を生きる証人としての私たちのポートレートを作りたい」と思いを固めたという。「とにかく大きいものにする予定だ。高さ4メートル、幅は80とか100メートルにもなるかもしれない。とてつもなく制作費がかかりそうなので資金の工面をクリアしなければならないが、今年、全体像を発表し、来年の夏のフェスティバルに向けて制作を進めていきたい」とのこと。完成した作品が見られるのはまだ先のことになりそうだが、私たちのロックダウンの記憶がこんな形で遠い未来へと保存されることを想像すると、今から楽しみで仕方がない。
『Mirades des del confinament (ロックダウンの中から見えたもの)』
ジョアン・フォンクベルタがロックダウン中に撮影した写真をプロジェクトサイトで募り、繋ぎ合わせて巨大な一枚の作品にするアートを製作中。完成は2021年夏を目指す。
