ART
京都|杉本博司の斬新な“表具”の世界へ。
『カーサ ブルータス』2020年3月号より
June 19, 2020 | Art, Design, Travel | HYOGU | photo_Yuji Ono text_Mari Matsubara editor_Jun Ishida
表具とは古裂や布、紙などを用いて作品を掛軸などに仕立てること。古美術収集を通じて自分好みの表具を追求していた杉本博司は伝統的な約束事を一切無視し、現代アートまでも斬新に表具します。いま京都の〈細見美術館〉で、杉本が仕立てた表具作品を見ることができます。
掛け軸といえば仏画や山水画、難解な禅語などを思い浮かべるが、杉本のアトリエにはときにレンブラントや古代エジプトの死者の書、18世紀フランスの解剖図までが表具され、床の間に飾られる。
「もともと古美術を収集するようになって、手に入れた掛軸を自分好みに表具し直していました。そのうち自分の写真作品もリトグラフ化して軸装するようになり、その最初の例が2005年の《華厳滝図》です(展覧会に出品)」
表具の世界にはもともと「真行草」のスタイルがあり、本紙の格が高いと金襴緞子などの派手な装飾裂を使うこともあるのだが、杉本の表具スタイルとは、伝統的な決まりごとから離れ、自身の美的感覚で布を選び、バランスをとる。
「豪華な表具で本紙より目立つようなことはしたくない。柱(本紙の左右)もごく細く、風帯(上から下がる2本の帯)も省略します」
「もともと古美術を収集するようになって、手に入れた掛軸を自分好みに表具し直していました。そのうち自分の写真作品もリトグラフ化して軸装するようになり、その最初の例が2005年の《華厳滝図》です(展覧会に出品)」
表具の世界にはもともと「真行草」のスタイルがあり、本紙の格が高いと金襴緞子などの派手な装飾裂を使うこともあるのだが、杉本の表具スタイルとは、伝統的な決まりごとから離れ、自身の美的感覚で布を選び、バランスをとる。
「豪華な表具で本紙より目立つようなことはしたくない。柱(本紙の左右)もごく細く、風帯(上から下がる2本の帯)も省略します」
杉本にとって掛軸とは、茶席だけでなく来客をもてなす際のコミュニケーションツールなのだ。
「益田鈍翁が茶席に仏教美術を取り入れたことは非常に画期的でした。それまでは仏画を茶掛けにすることなどありえなかったのですから。決まりごとを無視した先に新しい茶の湯が生まれた。だから私も現代アートを表具して、お客様へのメッセージや頓知を込めたもてなしをしたいと考えました」
表具ひとつで本紙の持つ雰囲気がガラリと変わる。元来アートではなかったものまでアートに昇華させる。杉本表具は時にウィットを含みながら、古くて新しいインスタレーションを見せてくれる。
「益田鈍翁が茶席に仏教美術を取り入れたことは非常に画期的でした。それまでは仏画を茶掛けにすることなどありえなかったのですから。決まりごとを無視した先に新しい茶の湯が生まれた。だから私も現代アートを表具して、お客様へのメッセージや頓知を込めたもてなしをしたいと考えました」
表具ひとつで本紙の持つ雰囲気がガラリと変わる。元来アートではなかったものまでアートに昇華させる。杉本表具は時にウィットを含みながら、古くて新しいインスタレーションを見せてくれる。
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