ART
青木野枝がつくる透明な鉄の森へ|青野尚子の今週末見るべきアート
| Art | casabrutus.com | photo_Satoshi Nagare text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
重いはずなのに軽やかに感じる青木野枝の作品。2019年、長崎・鹿児島・東京の3ヶ所で開いてきた個展はそれぞれの場に合わせた、全く異なるものでした。東京の〈府中市美術館〉で彼女が展開している空間とは? ご本人に話を聞きました。
『青木野枝 霧と鉄と山と』――2019年12月14日から始まった〈府中市美術館〉での個展のタイトルだ。鉄は青木が初期からずっと使っている素材。この会場でも、直線や環状の鉄を塔や山のように組み合わせた、大きなオブジェが出迎える。
「鉄は熱すると赤く光るんです。特に厚い鉄は冷えるときに周りから冷えていくので、半透明になって中に光が残る。まるでゼリーの中のようで、すごくきれいだなあ、と思っていました。だから鉄は私にとっては透明な素材なんです」(青木野枝)
〈府中市美術館〉では輪になった鉄のパーツをつなぎあわせた作品が2つ、出品されている。鉄の板を環状に溶断し、それらを溶接したものだ。この輪のパーツを作る作業に時間がかかるのだという。
〈府中市美術館〉では輪になった鉄のパーツをつなぎあわせた作品が2つ、出品されている。鉄の板を環状に溶断し、それらを溶接したものだ。この輪のパーツを作る作業に時間がかかるのだという。
「朝から夜まで鉄の板をずっと、何千、何万と丸く切っていくんです。でも繰り返すのが大事なのでは、と思ったりもする。繰り返すといっても同じところに戻ってくることはありません。『平家物語』の『諸行無常』や『方丈記』の『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず』という文章のように」
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青野尚子
あおのなおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に『新・美術空間散歩』(日東書院新社)、『背徳の西洋美術史』(池上英洋と共著、エムディエヌコーポレーション)、『美術でめぐる西洋史年表』(池上英洋と共著、新星出版社)。
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