ART
100歳の現役画家、ピエール・スーラージュがルーブル美術館に!
| Art | casabrutus.com | text_Mami Iida editor_Yuka Uchida
「黒」を探求した絵画で世界的に知られるピエール・スーラージュ。まもなく100歳になる巨匠の回顧展が、ルーブル美術館で開幕! 代表作から3メートル大の新作まで集めた展示をレポートします。
今年のクリスマスイブにめでたく100歳の誕生日を迎えるピエール・スーラージュ。歴代のフランス大統領がアトリエを訪れるほどの国民的画家で、その作品は現役のフランス人画家で最も高額。最近も1960年制作の絵画が960万ユーロ(約11億7000万円!)で買われている。ルーブル美術館で画家が存命中に回顧展を行うのは、シャガール、ピカソに次いで3人目。このことからも、その名誉のほどがうかがえる。
第一次世界大戦が終わった翌年に生まれ、第二次世界大戦後にパリで画家として暮らし始めたスーラージュ。まもなくニューヨーク近代美術館の学芸員がアトリエを訪れ、作品を購入するなど、若くして頭角を現した。今日も現役で、自作した大型の刷毛を握り、南仏の町・セットにあるアトリエで制作を続けている。この回顧展ではスーラージュの半生に伴走してきた大御所フランス人キュレーター2名が、70年に渡る絵画制作の変遷を示す代表作と新作まで約20点を厳選した。
第一次世界大戦が終わった翌年に生まれ、第二次世界大戦後にパリで画家として暮らし始めたスーラージュ。まもなくニューヨーク近代美術館の学芸員がアトリエを訪れ、作品を購入するなど、若くして頭角を現した。今日も現役で、自作した大型の刷毛を握り、南仏の町・セットにあるアトリエで制作を続けている。この回顧展ではスーラージュの半生に伴走してきた大御所フランス人キュレーター2名が、70年に渡る絵画制作の変遷を示す代表作と新作まで約20点を厳選した。
キュビズムを超えた、物質としての絵画。
20世紀初頭、ピカソやブラックによって、近代絵画史でもっとも画期的な具象表現「キュビズム」が誕生した。1930年には、カンディンスキーやモンドリアンらが「抽象絵画」を確立。1919年生まれのスーラージュは、こうした西洋絵画史の新たな潮流を目の当たりにしながらも、自らの道を歩んでいく。有名なのは、子供の頃に黒い墨で雪の白さを描こうとしたエピソード。第二次世界大戦後の精神性を表したフランス独自の抽象表現主義「アンフォルメル」ともおもむきを異にしたスーラージュは、一番好きな色だという黒で、絵画を物語ではなく「もの(la chose)」として探求していったのだ。黒から生まれる光。
会場には時系列に沿って作品が並ぶ。冒頭では、絵に専心するためパリに住み始めた1946年の作品、その名も《紙の上のクルミ塗料》が見られる。褐色の濃淡と、その色彩が際立たせる白地とのコントラストが際立つ。黒の探求は、光の探求でもあった。《ガラスの上のタール》は、温室用のガラスに黒いタールで描いた作品。黒の物質と色彩の中に、ガラスを通して光を取り込む試みだ。
1950年代に描いた作品群はその名も《絵画》。その黒にはマチエール(質)が与えられ、画家と絵画とのあいだの新たな関係性が生まれている。
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