ART
複雑な世界のレイヤーを写し出す、ヴォルフガング・ティルマンス。
August 14, 2015 | Art | casabrutus.com | text_Naoko Aono photo_Kunihiro Fukumori Wolfgang Tillmans / Courtesy of Wako Works of Art, Tokyo
日本の美術館では11年ぶりになる個展を開催中のヴォルフガング・ティルマンス。空間にあわせてインスタレーションされた展示は大阪のみの開催だ。映像作品や新作、資料を含め、約200点が並ぶ。来日した彼に、展覧会について聞いた。
Q 展覧会のタイトル「Your Body is Yours」にはどんな意味が込められているのですか?
これはちょっと挑発的なタイトルだ。「あなたの体はあなたのもの」というのは当たり前のことだけれど、「あなたの体はあなたのもの?」と疑問符をつけることもできる。自分の体は自分がコントロールしているとみんな思っているけれど、社会的な文脈によってその認識が変えられている可能性はある。自己と、自身の体との関係性を疑ってみては? という提言なんだ。
これはちょっと挑発的なタイトルだ。「あなたの体はあなたのもの」というのは当たり前のことだけれど、「あなたの体はあなたのもの?」と疑問符をつけることもできる。自分の体は自分がコントロールしているとみんな思っているけれど、社会的な文脈によってその認識が変えられている可能性はある。自己と、自身の体との関係性を疑ってみては? という提言なんだ。
Q 展覧会の構成について教えてください。
展覧会はアトリウムから始まっていて、実はここが重要なんだ。大きなテーブルに本や雑誌、CDジャケット、インビテーション・カードが置いてある。僕のインタビューやレビューなどではなく、僕が撮影したり、編集・執筆したものだ。これらの印刷物も僕の作品であり、他の展示室に飾っている写真とは違う、アクティブなメディアなんだ。展示室は左から回ることを想定しているけれど、違う順番で見てもらってもかまわない。よく本を後からぱらぱらめくっている人がいるけど、そういうのも面白いと思うんだ。
展覧会はアトリウムから始まっていて、実はここが重要なんだ。大きなテーブルに本や雑誌、CDジャケット、インビテーション・カードが置いてある。僕のインタビューやレビューなどではなく、僕が撮影したり、編集・執筆したものだ。これらの印刷物も僕の作品であり、他の展示室に飾っている写真とは違う、アクティブなメディアなんだ。展示室は左から回ることを想定しているけれど、違う順番で見てもらってもかまわない。よく本を後からぱらぱらめくっている人がいるけど、そういうのも面白いと思うんだ。
Q 展示には印画紙を折り曲げた立体的なものや、コンピュータによる作品もありますね。
今回の展覧会は僕の個展の中でももっとも大規模なものになる。展示室はアトリウムの他に13の部屋があるけれど、一つ一つ違ったものに見えるはずだ。コンピュータを使ってイメージを重ねた作品もあるし、印画紙を折り曲げた「Lighter」のシリーズは写真をオブジェとして扱おうというもの。服だけを写した大きな写真は、実際には体は写っていないけれど、その背後に身体の存在を感じさせる。身体を抽象化したものとも言える。別の展示室の、植物を撮った大きな写真は自然と人間との関係性を表現したものだ。
Q ティルマンスさんは90年代初頭から写真を発表されていますが、その頃から変化したことがあると思いますか。
人は誰でも歳をとるし、僕も歳をとった。変わるべきものはあるだろうし、変わらないものもあるだろう。でも歳をとったからといって、遊ぶことをやめたりはしない。人は自由でいたいと思うし、ダンスが好きで、自然の中にいること、セックスすること、話すこと、自分自身でいること、自らを表現することはやめられない。
重要なのは、人間は経済原理だけで動くわけではないということだ。社会はもっと働いて、お金を儲けて、消費せよ、とプレッシャーをかけてくる。公共空間もどんどん私有化されているから、公園でも自由に座れなくなるかもしれない。僕はできたらそういったシステムから脱却できないか、と考えている。クリエイティブなファッションブランドなら支持するけれど、ステイタスだけを追い求めるようなものならいらないと思っているんだ。
今回の展覧会は僕の個展の中でももっとも大規模なものになる。展示室はアトリウムの他に13の部屋があるけれど、一つ一つ違ったものに見えるはずだ。コンピュータを使ってイメージを重ねた作品もあるし、印画紙を折り曲げた「Lighter」のシリーズは写真をオブジェとして扱おうというもの。服だけを写した大きな写真は、実際には体は写っていないけれど、その背後に身体の存在を感じさせる。身体を抽象化したものとも言える。別の展示室の、植物を撮った大きな写真は自然と人間との関係性を表現したものだ。
Q ティルマンスさんは90年代初頭から写真を発表されていますが、その頃から変化したことがあると思いますか。
人は誰でも歳をとるし、僕も歳をとった。変わるべきものはあるだろうし、変わらないものもあるだろう。でも歳をとったからといって、遊ぶことをやめたりはしない。人は自由でいたいと思うし、ダンスが好きで、自然の中にいること、セックスすること、話すこと、自分自身でいること、自らを表現することはやめられない。
重要なのは、人間は経済原理だけで動くわけではないということだ。社会はもっと働いて、お金を儲けて、消費せよ、とプレッシャーをかけてくる。公共空間もどんどん私有化されているから、公園でも自由に座れなくなるかもしれない。僕はできたらそういったシステムから脱却できないか、と考えている。クリエイティブなファッションブランドなら支持するけれど、ステイタスだけを追い求めるようなものならいらないと思っているんだ。
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