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佐賀でモダニズムの傑作と新時代のアリーナを巡る。
『カーサ ブルータス』2023年11月号より
October 6, 2023 | Architecture, Travel | PR | photo_Kenya Abe text_Akio Mitomi
坂倉準三設計のDOCOMOMO選定建築〈市村記念体育館〉と、スポーツにもエンタメにも対応する最新設備を誇る〈SAGAアリーナ〉。60年の時を隔てた2つを比べることで、建築の生かし方が見えてくる。
●〈市村記念体育館〉| 用途を転換して保存・活用へ、 大規模な改修工事が始まる。
正面から見える王冠のようなギザギザの意匠で、佐賀県民から長きにわたって親しまれてきた〈市村記念体育館〉。この見た目、実は柱の役割を果たすV字の壁が建物の外周を取り巻き、上に乗ったリング状の梁からHP(双曲放物面)シェル屋根を吊るという構造が、そのまま表現になっている。
設計者の坂倉準三は、ル・コルビュジエに師事したモダニズム建築の巨匠。依頼者は佐賀県出身の実業家でリコー創業者の市村清であり、〈佐賀県体育館〉として県に寄付、29年後に〈市村記念体育館〉と改称された。
設計者の坂倉準三は、ル・コルビュジエに師事したモダニズム建築の巨匠。依頼者は佐賀県出身の実業家でリコー創業者の市村清であり、〈佐賀県体育館〉として県に寄付、29年後に〈市村記念体育館〉と改称された。
館内に入ると、木床の競技フロアを東西は2階、北は2〜3階の観客席が囲み、南正面に固定舞台がある。南北を高くして屋根を吊ると同時に、その下に生まれた空間に観客席や舞台装置、階段室や事務室、楽屋などが収まる。楽屋には、坂倉準三建築研究所のデザインで当時作られたチェアが今も大切に使われている。また、柱の役割を果たすV字壁が場所により異なる角度で内側に傾いているため、角度違いの平行四辺形の窓枠が並び、平衡感覚が疑わしくなるのもこの場所の面白い経験だ。
60年近く、スポーツ競技やコンサート、博覧会パビリオンなどに利用されてきたが、老朽化やキャパシティ不足、耐震対策の必要性などが指摘され、2019年には市村記念体育館利活用検討委員会が発足。用途を文化施設に変更して保存・活用する方向が示された。
60年近く、スポーツ競技やコンサート、博覧会パビリオンなどに利用されてきたが、老朽化やキャパシティ不足、耐震対策の必要性などが指摘され、2019年には市村記念体育館利活用検討委員会が発足。用途を文化施設に変更して保存・活用する方向が示された。
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