ARCHITECTUREPR
帝国ホテル・ライト館竣工100周年! 田根剛と〈博物館 明治村〉を訪ねました。
『カーサ ブルータス』2023年10月号より
October 3, 2023 | Architecture, Design, Travel | PR | photo_Satoshi Nagare text_Yoshinao Yamada
明治時代を中心とする建築を今に伝える〈博物館 明治村〉。帝国ホテル 東京・新本館デザインアーキテクトを務める、田根剛と共に移築された中央玄関を巡ります。
愛知県犬山市の〈博物館 明治村〉は明治時代を中心とした建造物を移築し、保存展示する野外博物館だ。11件の重要文化財を含む多くの建築群の中でもひときわ人々に愛されるのが、フランク・ロイド・ライトの設計による〈帝国ホテル中央玄関〉。部分保存にもかかわらず、ライト独特の濃密な空間体験を今に伝える。
「数年前にも訪れていますが、以前に訪れた時とまったく同じ印象です」
と語るのは、建築家の田根剛さんだ。帝国ホテル 東京・新本館のデザインアーキテクトに抜擢された彼は、この建物をどのように読み解くのだろう。
「やはりエントランスから館内に入った時に圧倒されます。エントランスで一度空間を絞り、ロビーに向けて広げる感覚といえばいいでしょうか。それは何度体験しても、僕にとって新鮮な驚きを与えてくれます」
「数年前にも訪れていますが、以前に訪れた時とまったく同じ印象です」
と語るのは、建築家の田根剛さんだ。帝国ホテル 東京・新本館のデザインアーキテクトに抜擢された彼は、この建物をどのように読み解くのだろう。
「やはりエントランスから館内に入った時に圧倒されます。エントランスで一度空間を絞り、ロビーに向けて広げる感覚といえばいいでしょうか。それは何度体験しても、僕にとって新鮮な驚きを与えてくれます」
田根さんはかつて日比谷にあった建物を想像する。日比谷通りから池のあるアプローチを抜け、車寄せで低い軒に迎えられる。その想像は途中から現実となり、赤い絨毯敷きの階段を上りきるとロビーの高い天井が広がる。
旧帝国ホテルが明治村に移築されると決まったのは、すでに客室部分の解体が始まっていた1967年。中央玄関部分のみが保存対象となったが、部材を分解しての移築保存が困難な鉄筋コンクリート造につき様式保存が採用された。
「僕はライトの建築に音楽を感じます。ロビーは音楽における序章と同じ意味合いを持ちますが、ベートーヴェンのような力強い始まりですね。音楽は人の感情を一つにする力を持っているけれど、ライトの建築にも同じ力が宿る。この建築を見て、魅力や驚きを感じない人はいないでしょう」
また田根さんは、ライトの建築が特別なのは一つの独創性に頼ることなく、光や音、建材の厚みある物質感といった五感に作用する複合的な要素を持った総合芸術的な濃密な体験があるからだと考える。ロビーを中心とした3層の空間は決して大きくない。しかし十分にその濃密な体験を味わうことができる。
「日本の名建築が再び失われている今、これを遺してくれたことの意味をあらためて考えたい」と田根さんは語った。
旧帝国ホテルが明治村に移築されると決まったのは、すでに客室部分の解体が始まっていた1967年。中央玄関部分のみが保存対象となったが、部材を分解しての移築保存が困難な鉄筋コンクリート造につき様式保存が採用された。
「僕はライトの建築に音楽を感じます。ロビーは音楽における序章と同じ意味合いを持ちますが、ベートーヴェンのような力強い始まりですね。音楽は人の感情を一つにする力を持っているけれど、ライトの建築にも同じ力が宿る。この建築を見て、魅力や驚きを感じない人はいないでしょう」
また田根さんは、ライトの建築が特別なのは一つの独創性に頼ることなく、光や音、建材の厚みある物質感といった五感に作用する複合的な要素を持った総合芸術的な濃密な体験があるからだと考える。ロビーを中心とした3層の空間は決して大きくない。しかし十分にその濃密な体験を味わうことができる。
「日本の名建築が再び失われている今、これを遺してくれたことの意味をあらためて考えたい」と田根さんは語った。
Loading...