ARCHITECTURE
ヴィトラ キャンパスの最新作は、田根剛のガーデンハウスです。
『カーサ ブルータス』2023年9月号より
August 25, 2023 | Architecture, Design, Travel | a wall newspaper | photo_Julien Lanoo text_Megumi Yamashita
2030年までにカーボンニュートラル実現を目指すヴィトラ。地産の素材と伝統技術を生かした田根剛の新境地が実現。
「ラディカルなのに懐かしく感じます」。〈ヴィトラ キャンパス〉に完成した田根剛設計の〈Tane Garden House〉。このプロジェクトをリードしたヴィトラの前社長で名誉会長のロルフ・フェルバウムは、プロセスに3年をかけたこの作品の出来栄えをこう賞賛する。1981年の火事をきっかけに、彼が創り上げてきた〈ヴィトラ キャンパス〉には、ザハ・ハディド、安藤忠雄、SANAA、ヘルツォーク&ド・ムーロンなど、有名建築家設計の工場やショールーム、ミュージアムが並んでいる。その中に加わったこの最新作は、屋根から外壁まで茅で葺かれた小さな建物だ。
時代の変遷と現社長でロルフの姪に当たるノラ・フェルバウムの主導で、気候変動危機対策を方針に挙げるヴィトラ。今回の作品は、2020年に完成したピート・アウドルフのガーデンに続くもので、庭師の休憩所が主目的だ。日本的? いやドイツ風? と、時代、国籍、スタイルとも型にはまらない不思議なデザインになっている。
時代の変遷と現社長でロルフの姪に当たるノラ・フェルバウムの主導で、気候変動危機対策を方針に挙げるヴィトラ。今回の作品は、2020年に完成したピート・アウドルフのガーデンに続くもので、庭師の休憩所が主目的だ。日本的? いやドイツ風? と、時代、国籍、スタイルとも型にはまらない不思議なデザインになっている。
「ロルフはアイデアのソースをたくさん提案してくれました」と言う田根。プロセスを重視するデザイン手法は、ロルフが若い時にチャールズ・イームズから直接学んだもの。記憶を掘り起こす創作に挑んできた田根だが、そのロルフのサポートでトライ&エラーを繰り返した今回のプロジェクトには学びが多かったという。中でもインスパイアを受けたのが、スイス各地から古い建物が移築された〈バレンベルク野外博物館〉。そして街や建築の心地良さや美しさの要素の共通言語化を提唱するクリストファー・アレグザンダーの著書『パタン・ランゲージ』だ。
「ドイツやスイスの伝統的な手法や素材を探求し、小さな模型を無数に作りながら考えました。考古学的に探究を掘り下げる一方、サステナブルな観点から地下資源は使わず、茅、木、石、縄など、地元産で天然の“オーバーグラウンド(地上)の素材”を使うことにこだわリました。茅葺きは断熱効果も高く、だんだん硬くなり、石のようなシルバーグレーに変色することも魅力です。20年ごとに葺き替えが必要なので、職人技の維持も不可欠になります」
「ドイツやスイスの伝統的な手法や素材を探求し、小さな模型を無数に作りながら考えました。考古学的に探究を掘り下げる一方、サステナブルな観点から地下資源は使わず、茅、木、石、縄など、地元産で天然の“オーバーグラウンド(地上)の素材”を使うことにこだわリました。茅葺きは断熱効果も高く、だんだん硬くなり、石のようなシルバーグレーに変色することも魅力です。20年ごとに葺き替えが必要なので、職人技の維持も不可欠になります」
Loading...