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ARCHITECTURE

山下めぐみのロンドン通信|ジャン・ヌーベル渾身作〈カタール国立博物館〉へ。

| Architecture, Travel | casabrutus.com | photo_Iwan Baan, Megumi Yamashita   text_Megumi Yamashita

ペルシャ湾に突き出した小さな半島にあるカタール。油田の発見でなだれ込んだ富により、砂漠の国は一気に近代化した。そんな国の象徴にして、人々の拠り所となる〈カタール国立博物館〉がオープンに。早速、現地へ!

複雑な外観のフォルムは内観にも続く。
複雑な外観のフォルムは内観にも続く。
海と高層ビルに挟まれた立地。それでも「砂漠にいる」と体感できる。
海と高層ビルに挟まれた立地。それでも「砂漠にいる」と体感できる。
複雑な外観のフォルムは内観にも続く。
海と高層ビルに挟まれた立地。それでも「砂漠にいる」と体感できる。
アラブの中でも比較的リベラルな国、カタール。首都ドーハは過去50年ほどで高層ビルが林立するメトロポリスに急成長した。2017年からは覇権争いを背景にアラブ近隣国と国交断絶中だが、経済力を武器に独自の路線を貫いている。

その昔は海で採れる天然真珠が唯一の財源だったという、遊牧民が暮らす砂漠の国。恒久的な建物や物質的な文化財は少ないが、海と砂漠をベースにした自然史や民族史を伝えることも、この〈カタール国立博物館〉創設の目的だ。

今回、その設計を手がけたのは、2017年オープンした〈ルーブル・アブダビ〉と同じくジャン・ヌーベル。同じアラブの国のミュージアムながら、 ルーブルとはガラリと異なるデザインになっている。

少し前まで何もなかった砂漠の国の象徴となるものとは? ヌーベルはそのインスピレーションを「砂漠のバラ」に求めた。鉱物やミネラル、砂などがバラの花のように結晶化したものだ。

「長い月日を掛けてできた自然の造形の砂漠のバラは、カタールを象徴するものにふさわしい。とてつもなく入り組んだフォルムを建築として表現することは至難の技であった」(ジャン・ヌーベル)
スチールのフレームに繊維補強コンクリートを貼り合わせた構造。コンピュータを駆使して設計されたものだが、職人の手仕事が感じられる。
スチールのフレームに繊維補強コンクリートを貼り合わせた構造。コンピュータを駆使して設計されたものだが、職人の手仕事が感じられる。
修復保存された首長王族サーニー家の旧宮殿部分。
修復保存された首長王族サーニー家の旧宮殿部分。
砂地の広場と建物が一続きで、自由に探索できる。
砂地の広場と建物が一続きで、自由に探索できる。
デザインのインスピレーションになった「砂漠のバラ」
デザインのインスピレーションになった「砂漠のバラ」
スチールのフレームに繊維補強コンクリートを貼り合わせた構造。コンピュータを駆使して設計されたものだが、職人の手仕事が感じられる。
修復保存された首長王族サーニー家の旧宮殿部分。
砂地の広場と建物が一続きで、自由に探索できる。
デザインのインスピレーションになった「砂漠のバラ」
18年の歳月を経て完成した539の「花びら」が複雑に組見込まれたその完成作は、スケールも構造もデザインも前代未聞と言っていい。ヌーベルの作品の中でも異色であり、後世に語り継がれるであろう大作だ。「花びら」は、スチールのフレームに繊維補強コンクリートのパネルを貼り付けたものだが、それぞれがジグソーパズルのような小さいパネルから構成されている。

場所は首長王族サーニー家の旧宮殿があったところで、修復した宮殿を含め、「砂漠のバラ」が広大な敷地にリング状にぐるりと並ぶ。中央には大きな砂地のパブリックスペースがあり、背景に高層ビルが並んでいても「砂漠のど真ん中にいる」ことがひしと感じられるスケール感だ。

建物は全長350メートルに及び、砂漠の真ん中にいる感じは館内に入っても継続する。外壁、内壁共にベージュの砂の色。全体に薄暗く、洞窟の中のような、あるいはベドウィンのテントの中のような。所々に切り取られた窓が、現実に引き戻す。
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山下めぐみのロンドン通信illustration Yoshifumi Takeda

山下めぐみ

やました めぐみ  ロンドンをベースに各誌に寄稿。イギリスをはじめ、世界各地の建築やデザイン、都市開発にまつわるコンサルティング、建築を巡る旅を企画提案するArchitabi主宰。https://www.architabi.com

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