スイス・バーゼルに新しい “ピカソ美術館” が出現? | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

スイス・バーゼルに新しい “ピカソ美術館” が出現?

ピカソの青の時代とバラ色の時代の作品を世界各国41箇所から集めた展覧会が〈バイエラー財団美術館〉で開催中。さながら ”ピカソミュージアム” が出現したような様相で、話題沸騰中だ。

Pablo Picasso, Acrobate et jeune arlequin, 1905
Gouache on cardboard, 105×76cm
Private collection
(c) Succession Picasso / 2018, ProLitteris, Zurich
スイスのバーゼルにある〈バイエラー財団美術館〉は、その類まれなコレクションと、質が高くタイムリーな企画展で、今やヨーロッパでも5本の指に入るほどの人気美術館に成長した。今年で創設22年と若い歴史の中で、バスキア展やゴーギャン展などアート界の話題をさらうエキシビションを数々開催して来たが「最も野心的であり複雑なプロジェクト」と館長自らが謳うのが、現在開催中の『The Young Picasso — Blue and Rose Periods』だ。

タイトルのとおり、青の時代とバラ色の時代の作品のみ75点を集めた展覧会はヨーロッパでは初の試みで、世界各国41か所から作品を借り出す困難さから、今後の再現は不可能だろうと言われる。
青ざめた自画像はピカソの当時の心象を映し出す。Pablo Picasso, Autoportrait, 1901
Oil on canvas, 81×60cm
Musée national Picasso-Paris
(c) Succession Picasso / 2018, ProLitteris, Zurich
photo_ ©RMN-Grand Palais (Musée national Picasso-Paris) / Mathieu Rabeau
1900年、19歳でパリを初めて訪れたピカソは翌年には居をパリに移し、当時芸術の中心であったこの地で、ゴッホやロートレック、マティスなど、多くのアーティスト仲間と出会う。互いに影響を受けあう中で、1901年に親友のアーティスト、カサジェマスが自殺したことを期に、陰鬱なブルーに塗り込められた青の時代に。パリとバルセロナを行き来する中で、生と死、運命などを見つめ、社会的弱者である娼婦や乞食などを題材にした作品を描いた。

そして1904年、洗濯船と呼ばれたアパートで新しくパリでの生活をスタートさせたピカソは、ミューズと出会い恋に陥り、バラ色の時代を迎える。1907年にキュビズムへの扉を開いた衝撃作『アヴィニョンの娘たち』を描くまでの、わずか6年間の若きピカソのみずみずしい心の機微──葛藤と苦悩、情熱がひとつひとつの作品に込められた2つの時代は、ピカソの長いキャリアの中でもっとも動きの多いエキサイティングと言えるだろう。そこにフォーカスした本展は、現代美術の誕生を間近で見るような臨場感に溢れている。
青の時代の代表作。男性は亡くなったカサジェマスと言われている。
Pablo Picasso, La Vie, 1903
Oil on canvas, 197×127.3 cm
The Cleveland Museum of Art, Donation Hanna Fund
(c) Succession Picasso / ProLitteris, Zurich 2018
photo_(c) The Cleveland Museum of Art
パリで出会ったマティスの影響が色濃い作品。
Pablo Picasso, Arlequin et sa compagne, 1901

Öl auf Leinwand, 73 x 60 cm
Moskau, Staatliches Museum für Bildende Künste A. S. Puschkin
© Succession Picasso / 2018, ProLitteris, Zürich
Pablo Picasso, Arlequin assis sur fond rouge, 1905

Watercolour and ink on cardboard, 57.5 x 41.2 cm
Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie, Museum Berggruen
© Succession Picasso / 2018 ProLitteris, Zurich 2018
Photo: bpk / Nationalgalerie, SMB, Museum Berggruen / Jens Ziehe
青の時代の代表作。男性は亡くなったカサジェマスと言われている。 Pablo Picasso, La Vie, 1903 Oil on canvas, 197×127.3 cm The Cleveland Museum of Art, Donation Hanna Fund (c) Succession Picasso / ProLitteris, Zurich 2018 photo_(c) The Cleveland Museum of Art
パリで出会ったマティスの影響が色濃い作品。 Pablo Picasso, Arlequin et sa compagne, 1901 Öl auf Leinwand, 73 x 60 cm Moskau, Staatliches Museum für Bildende Künste A. S. Puschkin © Succession Picasso / 2018, ProLitteris, Zürich
Pablo Picasso, Arlequin assis sur fond rouge, 1905 Watercolour and ink on cardboard, 57.5 x 41.2 cm Staatliche Museen zu Berlin, Nationalgalerie, Museum Berggruen © Succession Picasso / 2018 ProLitteris, Zurich 2018 Photo: bpk / Nationalgalerie, SMB, Museum Berggruen / Jens Ziehe
2月に始まった本展は、すでにヨーロッパでは話題沸騰しており、連日多くの来場者を集めるが、人気の秘密はもうひとつある。バイエラー財団美術館では、通常館内を2つに分け、同時に2つのエキシビションが見られるが、同時開催中の「BEYELER COLLECTION/PICASSO PANORAMA」も、同財団が所有するピカソの作品のみで構成されているのだ。

こちらは初期のキュビズムから晩年の作品までと幅広く、二つの展覧会を見ればピカソの多様な顔をとらえることができる。財団創設者である故エルンスト・バイエラーはピカソ本人と親交があり、アートディーラーとして生涯で1,000以上のピカソの作品を扱っており、自身も30以上を所有していた。さらに言えば、『The Young Picasso — Blue and Rose Periods』展の最後に掲げられた1907年の作品『Femme』は、この作品だけは売却しないでほしいと夫人に懇願された同氏が、いちアートディーラーからコレクションを築くきっかけとなった記念すべき一品。そうした経歴を持つバイエラー財団美術館が渾身の力を振り絞って作り上げた、期間限定の“ピカソ美術館”は、バルセロナやパリにある常設のピカソ美術館に勝るとも劣らない、必見の企画だ。
Pablo Picasso, Femme (Epoque des «Demoiselles d’Avignon»), 1907
Oil on canvas, 119×93.5cm
Fondation Beyeler, Riehen / Basel
(c) Succession Picasso / 2018 ProLitteris, Zurich
photo_Robert Bayer, Basel

〈バイエラー財団美術館〉

5月26日まで。(「BEYELER COLLECTION/PICASSO PANORAMA」は5月5日まで。)