村上隆のコレクション展で現代美術史考。 | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

村上隆のコレクション展で現代美術史考。

〈熊本市現代美術館〉で村上隆のコレクション展が開催されている。日本の現代美術から陶芸まで、戦後日本の現代美術を再検証。「バブルラップ」と名付けられた展示とは?

村上の目玉モティーフによる壁紙を背景にネオンサインで「Bubblewrap 1945〜Today」。これは村上によればバブル期に人気を博したマンガ(1983年〜1989年講談社『モーニング』連載)と、のちにアニメ化される、わたせせいぞう『ハートカクテル』からのイメージ引用。正面作品は空山基《Sexy Robot_Walking》2018年。(c) 2018 Takashi Murakami/Kaikai Kiki Co.,Ltd.All Rights Reserved. ©Hajime Sorayama, Courtesy of NANZUKA
「平面、と、あの男はいったよな……(間違いなくいったのだ)……〈中略〉……そう、いまやすべては画面のなかにしかなかった。〈中略〉たしか平面といったよな?」(トム・ウルフ 高島平吾訳『現代美術コテンパン』晶文社)

村上隆は世界の最前線で活躍する現代美術家である。そして、美術品の大コレクター(コレクションの所有者は彼が主宰するカイカイキキ)である。巨大な動物のオブジェや本物のジェット戦闘機の残骸を材料にした美術作品を〈横浜美術館〉の吹き抜けスペースに出現させたり、〈十和田市現代美術館〉の展示室は現代陶芸の作品で埋め尽くされた。

そのコレクションのラインナップは重要文化財クラスの書画、陶芸作品から家具、生活骨董、現代陶芸…。そして彼の美術家としての主戦場である現代美術領域の作品を並べればここ数十年の国内外のアートムーブメントを見渡せるほどだ。
そんな村上がキュレーションした展覧会が開催されている。タイトルは「バブルラップ」。テーマは以下の長いサブタイトルが語ってくれている。

「もの派」があって、その後のアートムーブメントはいきなり「スーパーフラット」になっちゃうのだが、その間、つまりバブルの頃って、まだネーミングされてなくて、其処を「バブルラップ」って呼称するといろいろしっくりくると思います。特に陶芸の世界も合体するとわかりやすいので、その辺を村上隆のコレクションを展示したりして考察します。

ただ、ここに出てくる用語の意味がわからないと理解しにくいので、解説していこう。
くまモンと村上隆。オープニングイベント(2018年12月14日)にて。 (c) 熊本県くまモン
【もの派】 1960年代末〜1970年代中頃まで続いた日本のコンテンポラリーアートの大きなムーヴメント、あるいはレーベル。「具体」と並び称される。名前のとおり〈もの〉を材料にして単体または組み合わせる。石、木、紙、綿、鉄板、ワイヤー、パラフィンなどをほとんど加工せずに使う。1968年、関根伸夫が深さ2.7m、直径2.2mに掘られた穴の横に全く同じ高さ、直径に固めて作られた土の円柱を置いた《位相—大地》を発表し、作家の李禹煥が新たな視点で評価し、それが理論的支柱となった。

【具体】 戦前から活躍していた前衛画家で実業家の吉原治良がメンバー15人と1954年に兵庫県芦屋市で具体美術協会を結成した。嶋本昭三(「具体」という名の提案者でもある)、白髪一雄、村上三郎、金山明、田中敦子、元永定正らが主要メンバー。戦後の美術運動としては珍しく師弟関係が成り立つ。吉原治良の指導は「人の真似をするな。今までにないものをつくれ」というもの。海外にも紹介され、評価された。

【スーパーフラット】村上隆によって展開、提唱された現代美術のムーヴメントと理念、ならびにそれをもとに作られた展覧会。遠近法や陰影などを駆使しない日本美術の平面の表現、また、マンガやアニメ、ゲームなどの二次元の表現を言い得た。一方、ファインアートも広告のための美術なども等価であるという表現物の平等性も含んでいるともされる。「SUPER FLAT展」は東京、名古屋、ロサンジェルス、ミネアポリス、シアトルを巡回した。さらにその後、パリでの村上キュレーションによる「Coloriage(ぬりえ)」展、ニューヨークでの「リトルボーイ」展と合わせ、スーパーフラット三部作とされる。

【バブル】 ここでは1980年代の日本のバブル景気(平成バブル)の前後を指す。日本で起こった1986年12月から1991年2月までの51か月間の資産価格上昇と好景気、そしてそれに付随して起こった社会現象。このバブル景気の崩壊後、日本は「失われた20年」に突入することになる。

【バブルラップ】もともとはものを運搬、保存するときに保護する気泡緩衝材の商標名。潰すと破裂する時の擬音からプチプチとも呼ばれる。