ART
青物問屋の息子・伊藤若冲が描いた青果《菜蟲譜》|ニッポンのお宝、お蔵出し
November 13, 2018 | Art, Travel | casabrutus.com | text_Naoko Aono editor_Keiko Kusano
おいしそう。みずみずしい。愛らしい。そんな果物や野菜の絵を集めた展覧会が京都で開かれています。伊藤若冲が晩年に描いた、10メートルもある《菜蟲譜》をじっくり鑑賞できるチャンスです。
日本美術、特に絵画は傷みやすいため、西洋美術と違って限られた期間にしか公開されません。ルーヴル美術館の《モナ・リザ》のようにいつもそこにあるわけではないので、展示されるチャンスを逃さないようにしたいもの。本連載では、今見るべき日本美術の至宝をご紹介!
今回のお宝:《菜蟲譜》(さいちゅうふ)
お宝ポイント:青物問屋の息子・伊藤若冲による、およそ100種もの野菜や果物、50種以上の虫や蛙が登場する「野菜絵巻」。
公開期間:開催中〜12月9日
公開場所:京都〈泉屋博古館〉
野菜や果物を描いた絵(蔬果図・そかず)は中国で始まり、日本に輸入されたもの。身近で、わざわざ絵に描くこともなさそうな野菜が画題に選ばれるようになった理由の背景に『菜根譚』という書物がある。中国で16世紀に出版されたこの本には、「野菜の味を良くするためには根を育てなければならない(人生の洗練や味わいはその根を耕すことによる)」といった意味のことが書かれていた。また仏教では、野菜は修業に励み、質素な生活を送ることがよしとされる僧侶にふさわしい食べ物だ。
今回のお宝:《菜蟲譜》(さいちゅうふ)
お宝ポイント:青物問屋の息子・伊藤若冲による、およそ100種もの野菜や果物、50種以上の虫や蛙が登場する「野菜絵巻」。
公開期間:開催中〜12月9日
公開場所:京都〈泉屋博古館〉
野菜や果物を描いた絵(蔬果図・そかず)は中国で始まり、日本に輸入されたもの。身近で、わざわざ絵に描くこともなさそうな野菜が画題に選ばれるようになった理由の背景に『菜根譚』という書物がある。中国で16世紀に出版されたこの本には、「野菜の味を良くするためには根を育てなければならない(人生の洗練や味わいはその根を耕すことによる)」といった意味のことが書かれていた。また仏教では、野菜は修業に励み、質素な生活を送ることがよしとされる僧侶にふさわしい食べ物だ。
一方で多くの実がなる葡萄や石榴(ざくろ)、瓜は子孫繁栄を象徴するめでたい食べ物だった。たとえば清初期の画家、八大山人《瓜鼠図》では、次々に実のなる瓜に子だくさんのネズミが組み合わされている。この他にも大量の卵を抱くカニや、再生と延命のシンボルであるセミ、ネズミと同様に多産だがネズミより愛らしいリス(栗鼠)といった動物との組み合わせも人気の画題だった。
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illustration Yoshifumi Takeda
青野尚子
あおの なおこ ライター。アート、建築関係を中心に活動。共著に「新・美術空間散歩」(日東書院本社)。西山芳一写真集「Under Construction」(マガジンハウス)などの編集を担当。