内藤礼が作り出す“生”の内と外。|青野尚子の今週末見るべきアート | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

内藤礼が作り出す“生”の内と外。|青野尚子の今週末見るべきアート

ビーズ、糸、布、そして水や風。そんなひそやかなオブジェで空間を満たしていく内藤礼のアート。〈水戸芸術館〉で開催中の4年ぶりの大型個展では、ギャラリーが丸ごと一つの作品となって観客を迎えます。内藤礼に話を聞きました。

7室の展示。一つだけ帽子をかぶった《ひと》は明るい8室に眼差しを向けている。
内藤礼は古民家など古い歴史を持つ建物から近現代建築まで、場をていねいに読み取り、作品にしてきた。瀬戸内海の豊島にある〈豊島美術館〉では西沢立衛と協働、大きな水滴のような建物の中に風と水が流れるアートをつくっている。4年前の個展はアールデコの意匠が美しい〈東京都庭園美術館〉で、近年、彼女が制作している小さな《ひと》を中心にしたものだった。
1室の最初には小さなガラスのビーズが浮いている作品《母型》が。「ものが現れる瞬間に気づくことを大切に思っています」(内藤)。
今回の会場になった〈水戸芸術館〉は磯崎新の設計によるものだ。この空間で内藤はどんなものを作ったのだろう? 期待に胸を膨らませながら最初の展示室に入ると、そこには小さな光の粒が浮いている。糸で結ばれたガラスのビーズが浮かんでいるのだ。よく見ると、そのうちの2つは小さな鈴だ。わずかな風に揺れて音をたてることもある。先へ進むと空中に浮かんだ小さな水路や鏡、水が入ったガラス瓶、人形、風船、かすかに描画された絵などが現れる。
《母型》のガラスビーズは吹きガラスでできている。息を吹き込むことは魂を吹き込むイメージでもある。
この美術館はプロポーションの違う5つの展示室が直線上に並ぶ、という空間構成が特徴だ。1、3、5つめの展示室には天窓から自然光が入る。それ以外の2、4つ目の展示室と、この5つの展示室の脇を通路のようにつなぐ6室、さらに6室から1室とは反対の方向に向かうと現れる7室には天窓はない。
《母型》では実際に中を通り抜けることはできないが、内部を通過することが想定されていて、その“入り口”と“出口”にあたるところに小さな鈴がある。「こういった空間を通過して私たちは生まれてくるのではないか」(内藤)
内藤はこの美術館の全室で人工照明を使わず、自然光のみで作品を見せることにした。天窓のない展示室には、隣の部屋の天窓から光が回る。日が沈むと真っ暗になってしまうから、9月からは閉館時間が1時間繰り上がる。
隣の8室から光が入る7室は時間が経つにつれて様相を変える。この展示室で観客が持ち帰ることができる直径78ミリの丸い紙片は、誕生の時に与えられる赤ん坊が立つことができる最小の面積を表したもの。
「2001年に直島で《きんざ》という、自然光を受け入れる作品を作ったのですが、そのときに太陽の光とそれを受けとる人間について考えるようになりました。太陽の光という、私たちが受けとっているものがあらかじめあって、あとから私たちが生まれてくる。ここでは天窓から光が入る1、3、5室と、そこからの光が届こうとする、行き渡ろうとする展示室とがあります。暗いところにもかすかに光が届いている。〈水戸芸術館〉のギャラリー空間はそのことがくっきりと感じられる場所だと思いました」

「明るい地上には あなたの姿が見える」という展覧会のタイトルには「太陽から無際限の光が私たちに与えられている、その明るい地上にあなたは生きている」という思いが込められている。
天窓のない2室は6室とつながっていて、互いに見ることができる。白いフレームに収められたガラスは窓のイメージでもある。
半分より少し多い水が入った瓶が2つ並んでいる。「相手に近づいて自分の水を注ごうとしている。注ぐと自分は空っぽになってしまうけれど、それでもいいと思って注ごうとしている」(内藤)
4室は2室と似たような構成。「生活や人生は繰り返される」(内藤)、そのことを象徴する。
天窓のない2室は6室とつながっていて、互いに見ることができる。白いフレームに収められたガラスは窓のイメージでもある。
半分より少し多い水が入った瓶が2つ並んでいる。「相手に近づいて自分の水を注ごうとしている。注ぐと自分は空っぽになってしまうけれど、それでもいいと思って注ごうとしている」(内藤)
4室は2室と似たような構成。「生活や人生は繰り返される」(内藤)、そのことを象徴する。