エルメスが仕掛ける映画の迷宮へようこそ! | カーサ ブルータス Casa BRUTUS

エルメスが仕掛ける映画の迷宮へようこそ!

エルメスの展覧会『彼女と。』は、ギャラリーに並ぶアート作品を見て歩く、というタイプのものではありません。映画をモチーフにした二重、三重にも絡まった物語にいつの間にか取り込まれてしまう、不思議な体験が待っています。

彼女の恋人が語った、映画館裏の駐車場。
国立新美術館での『彼女と。』は“展覧会”と書かれているのだが、「エルメスが贈るシネマ体験」ともある。この展覧会は予約制。公式サイトで「エキストラ」か「アクター」を選び、申し込む。観客がそれぞれエキストラか俳優(アクター)になって映画製作の現場に参加する展覧会だ。
エントランスはレトロな映画館の入口のよう。
展示室に入ると小さな映画館のロビーがあり、次の部屋でショートフィルムを見てから先に進むとそれぞれ家の中や店など、映画のセットが設えられている。「アクター」はここで、ある女性を探す作家を演じることになる。「エキストラ」はカメラやマイクの前で作家が女性の友人や恋人に会い、話を聞くのを見る群衆となる。その先にはヘア&メークのブースや、衣裳・小道具が並ぶエリアが続く。さらに進むと波打ち際や映画館裏の駐車場、パリのアパルトマンの屋根の上などのセットが現れる。作家が探す女性がかつてそこに現れた、という設定だ。
パリのアパルトマンの屋根の上のセット。
セットの裏にはシーンに合わせて衣裳や小物が並べられている。
観客の多くは「エキストラ」として展覧会に参加し、俳優たちの演技を見ることになる。美術の文脈で言えばパフォーマンスを鑑賞するようなものだ。しかし、観客はアクターやエキストラとして映画のワンシーンに取り込まれる。通常なら一方的に作品を“見る”はずの観客が、“見られる”存在へとスイッチさせられるのだ。
「彼女」の友人や恋人が彼女について証言する。