ヌードの歴史と意味を探ってみませんか?|青野尚子の今週末見るべきアート
ありふれた画題でありながら、時に論争の的になる「ヌード」。身体というもっとも身近なモチーフを表現したアートがイギリスから横浜に上陸しました。
『ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより』展はイギリスの〈テート〉のコレクションを中心に、西洋美術における裸体表現の歴史をたどるもの。19世紀後半から現存する作家まで、ヌードを扱った多彩な作品が並ぶ。
展覧会はヴィクトリア朝時代のイギリスの画家、フレデリック・レイトンが描いた、うっとりするほど美しい女性の裸体から始まる。古代ギリシャ風の建物を背景に佇むなまめかしい女性はギリシャ神話に登場する女神プシュケだ。モラルにうるさいヴィクトリア朝時代にヌードを描くには「聖書や神話、物語のワンシーンを描いた神話画・歴史画である」というエクスキューズが必要だった。レイトンと同時代の作家たちはアダムとイヴや妖精の姿を借りて裸体を描いている。レイトンの女性は特定のモデルをそのまま描いたのではなく、複数の女性をもとにした理想の身体だ。現代の画像の加工に似ている。